研究課題
小児がんの生存率は概ね改善したものの、高リスクの小児がんは依然として予後不良である。予後の改善のために革新的な治療法の導入が必要である。免疫療法は既存の治療とは作用機序の異なる治療であり、近年、治療抵抗性の成人がんに対して抗腫瘍効果が証明され、本邦でも免疫逃避を抑制し腫瘍免疫を活性化させる抗PD-1抗体であるニボルマブが薬事承認を得るに至った。一方、小児がんにおいては、免疫療法の基礎検討は未だ少ない。我々は、本課題において、横紋筋肉腫を中心に、小児がんにおけるPD-L1を介した腫瘍免疫の免疫逃避の証明を行い、これらの基礎検討を基盤に抗PD-1抗体を小児がんにおいて臨床応用することを最終目標としている。今年度は、PD-L1以外の腫瘍免疫逃避に関わる遺伝子について検討を行った。PAX3-FOXO1陽性横紋筋肉腫細胞株3細胞株(Rh30、Rh28、Rh41)を用いて、PAX3-FOXO1ノックダウン後に、免疫チェックポイント分子の発現をリアルタイムPCR法、フローサイトメトリー法で検討した。腫瘍表面に発現し、腫瘍免疫逃避に関わる免疫チェックポイント分子として、PD-L2、CD155、Galectin-9、HVEM、B7-H3、B7-H4、ICOSL、CD80、CD86の発現を検討した。3細胞株に共通して発現の低下する免疫チェックポイント分子として、B7-H3があることが分かった。B7-H3の発現はリアルタイムPCR法でもフローサイトメトリー法でも低下していることが分かり、mRNAレベル、蛋白レベルで発現が低下していることが分かった。B7-H3は腫瘍免疫逃避に関与することが示唆されており、その機能解析により新たな知見が得られることが示唆された。