研究課題/領域番号 |
16K10037
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
池田 和幸 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30507786)
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研究分担者 |
長船 健二 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (80502947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 川崎病 / iPS細胞 / ガンマグロブリン不応 / RNA-sequencing解析 / GSEA解析 |
研究実績の概要 |
iPS細胞技術を用いて乳幼児に発生する頻度が高い原因不明の血管炎症候群である川崎病の病態解明を目指し、標準的な治療法であるガンマグロブリン静注療法(IVIG)への不応性や川崎病の重症度の病態関連候補分子を発見した。 川崎病におけるIVIG療法の病態解析はこれまでにも報告があるが、川崎病患者由来白血球を用いた解析しか存在せず、川崎病患者由来血管内皮細胞を用いた解析はなかった。本研究では、IVIG不応およびIVIG反応川崎病患者さんから体細胞を採取し、iPS細胞を作製した。さらに、既報のプロトコールを用いて川崎病患者由来iPS細胞を血管内皮細胞へ誘導し、RNA-sequencing解析を行った。解析の結果、IVIG不応川崎病患者由来iPS細胞から誘導した血管内皮細胞において、CXCL12遺伝子の発現が有意に上昇しており、Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)では、IL-6関連遺伝子群の発現が有意に上昇していた。 本報告は、川崎病患者由来iPS細胞を用いた疾患モデル作製研究の初めての報告であり、IVIG不応や川崎病の重症度に密接に関連しているCXCL12を発見し、IL-6関連遺伝子群もこれらの病態に深く関与していることを見出した(Ikeda K, et al. Circulation Journal, 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞技術を用いて、川崎病IVIG不応の病態に関連した候補分子であるCXCL12を発見し、論文投稿しCirculation Journal誌に掲載されたことから、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) iPS細胞由来血管内皮細胞におけるsiRNA, cDNAの強制発現系の確立:川崎病患者iPS細胞由来血管内皮細胞に病態候補分子のsiRNA, cDNAの強制発現系を構築し、サイトカイン刺激に対するICAM-1の発現や免疫細胞の遊走の動態について検討を行う。患者iPS細胞由来血管内皮細胞を用いたマイクロアレイ解析から抽出されたIVIG不応病態関連分子・CXCL12を強制発現系の標的とする。 (2) IVIG不応病態関連候補分子のin vivoでの検証:病態関連候補分子の遺伝子改変マウス(トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス)を作製し、川崎病血管炎の病態を模倣するか否かを検討する。IVIG病態関連候補分子としては、CXCL12を対象とする。川崎病血管炎類似マウスモデルは既にいくつか確立されているが、当科ではカンジダ菌体抽出物(CAWS)を用いたマウスモデルを使用しており、血管炎惹起物質としてCAWSを使用する予定である。IVIG不応病態関連候補分子が、病態の増悪あるいは軽快因子となるか否かを検討する。 (3) IVIG不応病態関連候補分子の臨床検体での検証:患者血清中におけるCXCL12の発現量を測定し、病態の有無、重症度との相関を検討する。併せて、小児で認められる川崎病以外の血管炎症候群(結節性多発動脈炎、高安病、IgA血管炎)の臨床検体においても候補分子の関連を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年はiPS細胞由来血管内皮細胞の機能解析を行いましたが、同時進行で行った論文執筆、投稿作業に時間を多く要した関係で、37万円ほど次年度繰り越しとなりました。ご高配賜りましたら幸いに存じます。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究に関する論文がpublishされたため、今回発見した、IVIG不応の病態に関連した分子であるCXCL12に関して、引き続き機能解析を行う予定にしている。1) iPS細胞由来血管内皮細胞におけるsiRNA, cDNAの強制発現系の確立、(2) IVIG不応病態関連候補分子のin vivoでの検証 (3) IVIG不応病態関連候補分子の臨床検体での検証、以上の内容で研究を行う予定にしている。
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