研究課題
川崎病は主に乳幼児に好発する原因不明の急性熱性疾患であり、無治療の場合には約25%の割合で冠動脈病変を合併する。およそ10~20%の割合でガンマグロブリン静注療法(IVIG)により解熱しないIVIG不応例が存在し、冠動脈病変を高率に合併する。川崎病の血管炎のメカニズムを解明するうえで、ヒト冠動脈内皮細胞あるいはヒト臍帯静脈内皮細胞を用いたin vitroの研究が主であるが、我々はiPS細胞由来血管内皮細胞を用いた研究を行った。川崎病患者IVIG不応例2例およびIVIG反応例2例から皮膚線維芽細胞あるいは末梢血T細胞を採取し、エピソーマルベクターを用いて初期化6因子を導入しiPS細胞を樹立し血管内皮細胞(ECs)への分化誘導を行った。IVIG不応およびIVIG反応川崎病患者から誘導したiPS細胞由来ECs(iPSC-ECs)の遺伝子発現プロファイルを、RNA-sequencing(RNA-seq)解析を用いて比較検討を行ったところ、IVIG 不応川崎病患者由来のiPSC-ECsにおいて、CXCL12の発現が著明に増加していた。さらに、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)では、IL-6関連遺伝子群がIVIG 不応川崎病患者由来のiPSC-ECsにおいて高発現であった。IVIGに対して治療抵抗性の重症川崎病症例では、単球、マクロファージを含む多くの白血球が血管壁へ浸潤し、冠動脈壁を完全に破壊する。CXCL12は白血球の動員、接着や血管内皮細胞を介した遊走にかかわっていることから、本研究結果からは、川崎病におけるIVIG不応や重症度を解明する上でCXCL12がkey moleculeであることが示唆された。今後は、今回発見したCXCL12について、in vitroとin vivoの実験系、臨床検体を用いることにより、IVIG不応川崎病における治療標的分子としての検証を行っていく予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Front Pediatr
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