研究実績の概要 |
本年度は、ノロウイルスのワクチン抗原となるVLPに対する新生児と成人の自然免疫応答の差異を明らかにするため、大腸菌由来のVLPを用いて、臍帯血由来ならびに成人末梢血由来の単球を刺激した後の細胞表面分子(HLA-DR, CD80, CD86, CD11c, CD11b)の発現とサイトカイン産生(TNF-alpha, IL-10, IL-6, IL-8, IL-12, IFN-gamma)を比較した。臍帯血は帝王切開後に排泄された胎盤から採取した。刺激前の臍帯血由来単球のMHC-class I分子の発現は成人末梢血由来の単球における発現よりも有意に低かったが、VLPによる刺激後6、12、24時間の細胞表面分子およびサイトカイン産生に有意な差はなく、いずれも顕著なサイトカイン産生・表面分子発現がみられた。しかし、その後の検証実験によって、大腸菌由来のリコンビナントVLPには大腸菌のLPSが高濃度に含有されていたことがわかり、顕著な免疫応答はVLPによるものではなく、LPSによるものと考えられ、LPS等のTLR作動薬を含まないVLPを用いて再実験を行う必要が生じた。そのため、バキュロウイルスあるいは酵母を用いて合成したVLPを使用することとし、東京大学医科学研究所炎症免疫学分野との共同研究としてバキュロウイルスを用いて合成したVLPを用いた免疫刺激を開始している。酵母由来のVLPも作成され次第、免疫研究を行う予定である。
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