研究実績の概要 |
目的:我々は酵母由来のZymosan が成人と同等の自然免疫応答を新生児に惹起できることを見いだしており、本研究では新生児・乳児に効果的なワクチンアジュバントとしてのZymosan の有用性を臍帯血研究によって明らかにする。 方法:帝王切開による分娩後の胎盤から臍帯血を採取し、磁気ビーズ法を用いてCD14陽性単球を分離した。対照群として健常成人の末梢血から同様に単球を分離した。両群の単球をzymosan(TLR2/6リガンド)で刺激を行い、6時間培養した後、単球の表面抗原(MHC class II,CD11b, CD11c, CD80, CD86, CD14, CD16)の発現をフローサイトメトリーで解析した。 結果:臍帯血由来の単球(CD14+CD16high)は成人血由来単球(CD14+CD16intermediate)よりもMHC class II、CD11b、CD80の発現が有意に低値であった。zymosan刺激下では、臍帯血群は成人群よりもMHC class II、CD11b、CD80の発現において有意に低値を示した。一方、TLR刺激による反応性(非刺激に対する刺激後の発現度)を比較すると、臍帯血群は成人群よりもMHC class IIとCD86の表面分子において高い反応性を示した。 考察:新生児の単球は成人血の単球と異なる表現型をもち、抗原提示に関わる表面分子(MHC class II, CD80)の基礎発現は低い。この基礎発現の低さが、新生児や乳児におけるワクチンによる免疫誘導効果の低さや感染症における重篤化に関わっていると推測された。一方、TLR2/6リガンドによる抗原提示関連表面分子の発現増強性は成人よりも新生児において強く、新生児・乳児のワクチン開発においてzymosanは抗原提示機能を増強する効果的なアジュバントとして期待される。
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