研究課題/領域番号 |
16K10040
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 尚志 北里大学, 北里生命科学研究所, 研究員 (90383629)
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研究分担者 |
澤田 成史 北里大学, 感染制御科学府, 助教 (40726535)
中山 哲夫 北里大学, 感染制御科学府, 特任教授 (60129567)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ムンプスウイルス / ワクチン |
研究実績の概要 |
研究初年度(28年度)は組換えウイルス、キメラウイルスの全長プラスミド作製、感染性ウイルス粒子の回収、各タンパク発現の確認を行った。まず、ムンプスホシノ株F、HN、NP領域遺伝子のクローニング、組換え麻疹ウイルス(MVAIK/MpNP)全長cDNAの構築、キメラウイルス(MVAIK/MpF_HN chimera)全長cDNAの構築を行い、当初の計画通りに組換えウイルス、キメラウイルスの全長cDNAの構築に成功した。また、麻疹AIK-CベクターのF、Hタンパク領域をムンプスF、HN領域に置換したMVAIK/MpF_HN chimera全長プラスミド作製後、F領域のみムンプスFに置換したMVAIK/MpF chimera、H領域のみムンプスHNに置換したMVAIK/MpHN chimeraの全長プラスミドもあわせて作製した。プラスミド作製に引き続き、Reverse genetics法を用い各々の感染ウイルス粒子回収に成功した。回収した組換え、キメラウイルスをVero細胞及びB95細胞に感染させ特異抗体を用いた免疫染色を施行、麻疹ウイルス蛋白とムンプスウイルス蛋白の発現を確認した。さらにモルモット血球を用いた赤血球凝集試験(HA試験)を施行し、ムンプスHNタンパクの発現を確認した。キメラウイルスのin Vitroでの性状を確認するため、各ウイルスを感染させたVero細胞、B95細胞における細胞変性効果部位のarea assayを行った。この結果、いずれのキメラウイルスもムンプスホシノ株と同様の細胞変性効果誘導能を持つことを確認した。次に、33,35,37,39℃環境下での各ウイルスの増殖能を検討し、ムンプス野生株およびホシノ株は39℃環境下でも増殖するのに対し、作製した各キメラウイルスは麻疹AIK-Cと同様に39℃では増殖しないことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、研究初年度中での組換えウイルス及びキメラウイルスの作製、感染性ウイルス粒子の回収に成功した。キメラウイルスcDNA構築の際、MVAIKΔSal/H_HN chimeraを作製する行程(キメラH_HN蛋白遺伝子の作製し麻疹AIK-CのSal I領域を欠失させたMVAIK/ΔSalに挿入)に時間を要したが、Ligation試薬とコンピテント細胞の変更を行い解決した。また、組換えウイルス(MVAIK/MpNP)の感染ウイルス粒子を回収した際、初回回収ウイルスのウイルスタイターが低く、transfection時に用いるヘルパープラスミド(AIK-C N, P, Lタンパク領域プラスミド)を変更し再度Reverse genetics法による回収を行い高タイター粒子が回収された。タンパク発現実験において、ムンプスウイルスタンパクはコマーシャルベースでの優良抗体が存在せず、構造解析の結果を参照しムンプスウイルスF、HN領域認識ポリクローナル抗体を作製し実験に用いた。キメラウイルスのin Vitro解析は順調に進み、作製したキメラウイルスがムンプスホシノ株と同様の細胞親和性と細胞変性誘導能を示し、麻疹AIK-Cと同じ温度感受性を保持する、という有益な結果が判明した。現在、麻疹感受性動物として知られるコットンラット(Sigmodon hispidus)への感染実験を準備中である。組換えウイルスに関して、現状ではムンプスウイルス細胞免疫能を測定する実験系が存在せず、実験系の確立に着手している。コットンラットにおけるRT-PCRを用いたサイトカイン・ケモカイン測定系の確立、ムンプスホシノ株NPタンパク領域をベースとした12アミノ酸程度のペプチドを作製し、有効な抗原刺激となり得る部位の同定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は当初の研究計画通り、作製した各ウイルスを用いた実験動物(コットンラット)への感染実験を行う(研究代表者:伊藤尚志、分担者:澤田成史)。過去の当研究室での実験経験より、初回接種8週後に追加接種を行い、2回目接種5週後にチャレンジ試験を行う予定である。この間、各週で採血を行い、血清学的評価を行う。並行してムンプスウイルス細胞免疫能評価系の確立を行い、チャレンジ試験後の各臓器を用いた細胞免疫能評価を行う予定である。尚、接種法(筋注、経鼻投与など)やサンプル回収時期は結果を参照し調整予定である。次にムンプスウイルス神経親和性解析(研究代表者:伊藤尚志、分担者:中山哲夫)を行う。各種ヒト内皮細胞等を用いたin Vitro解析系の確立、新生ラットを用いたRat neuro-virulence test(RNVT)を行う準備を進行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定で、キメラウイルスの感染確認のため蛍光マイクロプレートリーダー(Fluoroskan Ascent)を購入、使用予定であったが、免疫染色、赤血球凝集試験など他の方法に切り替えた。これにより使用額に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記器材購入費を抗体作製、細胞購入などに使用する。また細胞性免疫実験系確立のための試薬、ペプチド購入などで使用予定である。
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