研究課題
赤血球分化成熟を制御する転写因子KLF1は、赤芽球系細胞において細胞周期制御遺伝子の発現を微調整する重要な機能を有していて、最終分化と脱核の制御にも関与している。先天性赤血球形成異常性貧血(CDA)IV型は、KLF1の2番目のZnフィンガーのヘテロ接合変異によって引き起こされる(c.973G> A、p.E325K)事が海外の症例で報告されていた。我々は最近、同一のミスセンス変異を有するIV型CDAの日本人女性患者を診断した。KLF1変異によって引き起こされる赤血球形成異常のメカニズムを理解するために、我々はCDA患者からiPS細胞(KLF1-iPSC)を生成した。 KLF1-iPSCからin vitro分化誘導した赤芽球系細胞(KLF1-Ebl)は患者骨髄中赤芽球と同様の多核を示し、CD44発現低下、およびKLF1標的遺伝子発現の調節異常を示した。さらに、KLF1-Eblによるブロモデオキシウリジンの取り込みは、CD235a +/ CD71+段階で有意に減少し、マイクロアレイ分析は、CDKN2CおよびCDKN2Aなどの負の調節因子の発現の増加と共に、種々の細胞周期調節遺伝子に発現異常を認めた。KLF1_E325Kの誘導性発現はKLF1-EblにおいてG1期で細胞周期停止を引き起こした。KLF1-Ebl網羅的遺伝子発現レベルの解析では、EPB41、EPB42、GPI、GSRなど複数のKLF1標的遺伝子の発現低下が明らかになった。我々のデータは、KLF1のE325K変異が赤血球膜または酵素異常と関連して細胞周期調節因子の転写制御の破綻と関連していることが明らかになった。
3: やや遅れている
ミトファジー関連遺伝子を含む先天性溶血性貧血関連74遺伝子パネルを用いた次世代シークエンシング解析を続けているが、今年度はミトファジー異常による新規の先天性溶血性貧血症例を診断することが出来ず、研究計画に提示したスクリーニング方法の見直しが必要と考えている。
先天性溶血性貧血症例の生化学的解析は年80~90例解析しており、病型確定困難だった症例のうち同意を得られた症例についてミトファジー関連遺伝子10種(ULK1,BECN1,PIC3C3,AMBRA1,PRKAA1,ATG9A,TBC1D5,NIX,BNIP3,FUNDC1)について解析を進めると共に、フローサイトメーターを用いた成熟赤血球における残存ミトコンドリアの定量を進めていく。
フローサイトメーター故障による買い替えに時間を要し、研究期間延長を行った為
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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