研究課題
2015~2019年の4年間に合計255例の原因未確定の溶血性貧血症例を解析し、188例(73.7%)に病型を推定し得た。病因別では、赤血球膜異常症は140例(原因確定例の74.5%)、赤血球酵素異常症22例(同11.7%)、ヘモグロビン異常症11例(同5.9%)、その他が15例(同8.0%)であった。病型別では、遺伝性球状赤血球症(HS)が最も多く、病因確定例の50.0%を占め、二番目は脱水型遺伝性有口赤血球症(DHSt)の12.2%であった。DHStは軽症~中等症の慢性溶血性貧血と赤血球輸血非依存性の鉄過剰症が特徴的で、赤血球形態、赤血球膜表面積・赤血球浸透圧脆弱性の定量および溶血性貧血関連遺伝子パネルを用いたTarget-captured sequencing(TCS)解析で診断が可能であるが、TCS解析は時間が掛かり、より迅速なスクリーニング検査が必要である。今回DHSt症例に対して定量的浸透圧脆弱性試験(FCM-OF)における残存赤血球率を正常対照と比較したところ、p-value= 0.004662、AUC=0.9819、Cut-off値87.7~98.4と有意な結果を得たため、FCM-OFがDHStのスクリーニング検査として有用であることを明らかに出来た。溶血性貧血関連遺伝子パネルを用いた遺伝子解析は、赤血球膜タンパク(13種)・酵素(17種)をはじめとして、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、先天性赤血球形成異常性貧血(CDA)などの関連疾患33種の病因遺伝子、およびミトファジー関連11遺伝子を標的としたが、膜・酵素以外ではCDA一例を同定したのみで、その他の病因変異は検出し得なかった。原因未確定例は1歳以上が18.7%、1歳未満では50%に及んでおり、今後1歳未満例の病因解析方法の確立が必要と考えられた。
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