研究課題/領域番号 |
16K10042
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
永田 智 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70266055)
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研究分担者 |
鶴田 敏久 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70197771)
千葉 幸英 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80567991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 川崎病 / heat-shock protein / 上部消化管粘膜 |
研究実績の概要 |
川崎病の原因を確定するため、過去に申請者が患者の上部消化管から検出した「病原体の遺伝子」および川崎病の主要な合併症である冠動脈瘤形成の発端となる「病原体特異的なheat-shock protein(HSP) 」を川崎病患者の臨床検体から検出しうるツールを開発し、疾患対照患者(同年齢層の川崎病以外の発熱を伴う感染症患者)との比較検討を試みた。 I. 血液中の細菌遺伝子 (川崎病群20例、疾患対照群16例)の検出:川崎病群と疾患対照群間で、検出される細菌の種類に関しては明瞭な差異は認められなかっ た。 2. 血清Heat-shock 蛋白 (HSP) 60 の検出 (川崎病群30例、疾患対照群16例):川崎病急性期血清で認められるものと予想していたAcinetobacter 特異的 HSP60は、疾患対照群の血清中でも1例認められ、川崎病において特異的に血中に検出される蛋白と結論することはできなかった。AcinetobacterもしくはNesseria HSP60の患者血清中検出率は、川崎病群で10%、疾患対照群で6%程度であった。 3. 咽頭ぬぐい液の細菌遺伝子の検出 (川崎病群31例、疾患対照群22例):申請者らの過去の検討で川崎病の発症に関与すると推測していたNeisseria属の細菌は、新種のものであったが、細菌遺伝学的にはN.subflavaに最も近似するものであった。しかし、同菌は、川崎病群で疾患対照群の約2倍の検出頻度はあるものの、Fisher's exact testでは統計的有意差は認められなかった。一方、Enterobacteriaceaeの遺伝子は川崎病群でのみ検出され、疾患対照群では一切検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大防止対策としての申請者の所属する医療施設が入院制限を設けた影響で、川崎病患者、疾患対照患者の入院受け入れが遅れ、予定の対象サンプル数が集まっていないため。
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今後の研究の推進方策 |
川崎病の咽頭粘膜で特異的に分子生物学的手法によって検出されたEnterobacteriaceaeは、「腸内細菌科」と呼ばれ、多数の属を含むため、遺伝子のシークエン スを試み細菌種を同定する。目標症例数は、川崎病50例、疾患対照50例であるため、このサンプル数に達するまで、サンプリングは継続する。これまでの保存細菌、保存血清および同年度収集を試みる血液検体において、同定されたEnterobacteriaceae科の菌種の遺伝子およびHSP60解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に想定以上に時間を要し,さらに新型コロナウイルス感染拡大防止対策としての申請者の所属する医療施設が入院制限を設けた影響で、川崎病患者、疾患対照患者の入院受け入れが遅れ、予定の対象サンプル数が集まっていないため、次年度研究を遂行したいため、物品費(実験用薬剤購入)や有識者との意見交換や発表のために学会参加の旅費を支出する。
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