研究課題
若年性皮膚筋炎(JDM)の患者血漿を用いたプロテオミクス解析によって同定された抗血管内皮細胞抗体(AECA)の対応抗原候補蛋白に対するIgG型自己抗体をELISAにて検出した。昨年度は、heat shock congnate 71kDa (HSC70)、myosin light polypeptide 6 、myosin-9 、moesin 、tropomyosin alpha-4 およびperoxiredoxin 6 に対する自己抗体が対照小児に比べJDM患者で有意に検出され、これらの自己抗体の出現がJDM患者における皮膚潰瘍や一部の筋炎自己抗体と有意に関連していたことを示した。本年度はJDM患者で最も高頻度に検出された抗HSC70抗体を中心にその臨床的意義について検討した。HSC70に対する自己抗体はJDM患者(n=63)の35%、健常小児(n=40)の0% (P<0.001)、若年性特発性関節炎患者(n=50)の0% (P<0.001)、川崎病患者(n=19)の11% (P<0.005)で検出された。JDM患者において抗HSC70抗体陽性患者では陰性患者に比べ、筋炎関連自己抗体である抗Ro52抗体および抗NT5C1A抗体 や筋炎特異的自己抗体の抗MDA5抗体に対する自己抗体の出現が有意に高値であった。JDM患者における皮膚潰瘍や発熱は、HSC70に対する自己抗体の出現とそれぞれ有意に関連していた。さらにJDM患者における車いすやデバイスの使用も、抗HSC70抗体の出現と有意に関連していた。生化学検査では抗HSC70抗体陽性のJDM患者では陰性のJDM患者に比べ、血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が有意に高値であったが、クレアチンキナーゼ(CK)やアルドラーゼでは有意差は認められなかった。またJDMの疾患活動性を評価するphysician global damage assessment (MDDMAVAS) は、抗HSC70抗体陽性のJDM患者では陰性のJDM患者に比べ有意に高値であった。以上の結果からHSC70に対する自己抗体がJDMにおける血管壁の炎症や自己免疫の病態生理に関与している可能性が示唆された。
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Pediatric Rheumatology
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Current Opinion in Rheumatology
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