研究課題/領域番号 |
16K10046
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
大石 智洋 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80612770)
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研究分担者 |
宮田 一平 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20600969)
赤池 洋人 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40454813) [辞退]
田中 孝明 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40598091)
尾内 一信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80351899)
田中 悠平 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70446102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイコプラズマ |
研究実績の概要 |
前年度、M.pneuomoniaeの耐性機構解明の手掛かりとして施行した、M.pneumoniaeにおける標準株およびマクロライド感受性株とマクロライド耐性株とにおける増殖速度実験につき、M.penumoniaeの標準株および臨床分離株、さらに臨床分離株についてはマクロライド耐性遺伝子別に増殖速度実験を行ったところ、標準株と、臨床分離株(マクロライド感受性株およびマクロライド耐性株含む)、そして臨床分離株のうち一部のマクロライド耐性株の3グループで増殖速度に差が見られることが分かった。 また、昨年度(2016年)M.pneumoniae感染症が大流行していたため、それらの株も含め、本年度より、P1血清型のタイピングも従来のRFLP-PCR方により施行したところ、以前の大流行時(2011-2012年)とは違う血清型分布を示していることが判明した。さらに、異なる血清型ではそれぞれのマクロライド耐性率も異なることが判明した。さらに、増殖速度も測定したところ、同じ感受性株もしくは耐性株においてもやや異なることが判明した。 したがって、M.pneuomoniaeの耐性機構に関わる因子として、①増殖速度②P1血清型の2つの関与が示唆された。しかしながら、まだ実験をした菌株数が多くないため、今後、多くの菌株について実験を行い、証明する必要がある。 なお、各種抗菌薬添加培地によるマクロライド感受性株の耐性誘導実験を開始したが、まだ株数は少ないが臨床上問題となるような耐性株はほぼ検出されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、M.pneumoniaeにおけるマクロライド耐性機構を、マクロライド感受性株と耐性株の増殖速度、または各種マクロライド系薬間の耐性誘導の違いと考え、それぞれにつき本年度基礎実験を行った。前者については、菌株数はやや少ないものの、既に、標準株と、臨床分離株、そして臨床分離株のうち一部のマクロライド耐性株の3グループで増殖速度に差が見られることが明らかになった。また、昨年度の流行により、これまでとは異なるP1血清型の流行が起こり、それにより、P1血清型の違いという新たなマクロライド耐性に関わる因子も出現したため、想定した内容よりも、さらに進んだ解析が可能となった。 一方で、当初予定していた、各種マクロライド系薬におけるマクロライド感受性株の耐性誘導については、菌株数は少ないものの、臨床上明らかに問題となる耐性株の出現はないこと、過去の学会発表レベルの報告では、これら薬剤間の差を検出するためには、500株以上の検索が必要であることから、本年度、まずは前期の新たな知見を発展させるべくシステム構築を行ったため、この部分を差し引いても、「おおむね」順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
M.pneuomoniaeの耐性機構に関わる因子として示唆された①増殖速度②P1血清型の2つについてさらに検索していく。 ①に関しては、M.pneumoniaeのそれぞれ標準株、臨床分離株のうちマクロライド感受性株、マクロライド耐性株(2種類:増殖速度がマクロライド感受性株と同等の株およびより遅い株)について、遺伝子学的に解明することで増殖速度の耐性機構の関係を証明していく予定である。具体的には、それぞれの株のゲノムライブラリーを作成する予定である。 ②に関しては、近年流行し始めた菌株で、P1血清型が判明している株数が多くないため、近年検出された菌株につきP1血清型をなるべく多く測定すべく、従来のRFLP-PCR方よりも効率よく測定できるダイレクトシークエンスによる測定法をまずは構築する。そしてこの手法を用いてP1血清型を測定し、血清型間で異なる事象につき検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の欄にも記載したように、M.pneumoniaeの耐性機構の証明をする基礎実験の段階で、我々の想定とは異なった結果が出た。具体的には、マクロライド感受性株でも標準株と臨床分離株、そして、臨床分離株でもマクロライド感受性株と多くのマクロライド耐性株では増殖速度にはあまり違いのないこと、また、近年、これまで流行していなかったP1血清型が増え、その血清型は、これまで流行していた血清型と増殖速度やマクロライド耐性率に違いがあること等である。 そのため、当初は本年度はひたすら実験をする、すなわちランニングコストがかなり要する予定であったが、前期の結果を踏まえ、新たに、遺伝子的にこれらの株のうち増殖速度の異なった株間での違いを調査するべく、シークエンスに関わるシステム構築に時間を費やしたため、ランニングコストにかかると思われた費用との差が生じたのが、次年度使用額が生じた理由である。 次年度は、シークエンスにかかわるシステムが構築され、多くの株に対し実際に実験が行われるため、ランニングコストとして多くの費用が費やされる予定である。
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