研究課題
研究の目的:これまで腫瘍の遺伝子異常は多段階的に蓄積されるとされていたが、NGS解析により明らかにされた,クロモスリプシス(染色体破砕;chromothripsis)は一度に1~数本の染色体に粉砕が生じ、数十~数千のDNA断片化と再結合が起こり、キメラmRNAや欠失が多数生じるという新たな発がん機構が注目されている。難治性造血器腫瘍においてこれを研究する。対象:染色体分析で複雑核型、TP53遺伝子の在る17pの欠失、dmin (double minutes)、再発白血病、二次性白血病等から、思春期~若年成人の8例(12~30歳)を選択した。方法・結果:1)骨髄標本で、小核を確認し、一部は他の構造物との鑑別が難しかった。2)SNPアレイ解析CytoScan 750Karray (Affymetrix)を行い,限られた染色体内に遺伝子増幅や欠失が集中している症例を確認した。iAMP21症例に、21q、Xpのgain、17p、20qのlossが、二次性AMLでは、11p、17pにgain/loss、Xpのgain、Xqのlossがみられた。3)FISH法a) クロモスリプシスは、テロメア消失と二動原体の同時活性化によるBreakage Fusion Bridge; BFB サイクルが発生機構であるという説からPNA (Peptide nucleic acid)-FISH法により二動原体を解析した。dmins 症例に、G分染では判定困難なringが同時にあることを確認した。b) Double/multi -color FISHで、iAMP21、dminの検出を行った。4)RNA-sequencing (Illumina HiSeq4000)で、二次性AMLから、AMLでは報告のないNUP98 fusionを検出し、WGS (Illumina HiSeq X Ten)も解析中である。
2: おおむね順調に進展している
症例数は少ないが解析を行っており、計画した方法で、予想した結果が得られており、新しい遺伝子変異も検出できている。
1)解析結果からクロモスリプシスと考えられた白血病、MDSの予後や特徴的な臨床像との関連を明らかにする。2)形態像(小核)、染色体検査、FISH、およびSNP microarrayからクロモスリプシスの疑われる症例について、RNA sequencingと全ゲノムシークエンスWGSで確認する。現在検出された二次性白血病のNUP98 fusion についても詳細に解析する。3)TP53遺伝子等のゲノム損傷修復遺伝子を解析し、その異常とクロモスリプシスとの関連を明らかにする。4)臨床検査レベルで、クロモスリプシスの検出可能な簡便な方法を開発する。5)症例数を増やすとともに、新しい遺伝子変異については、さらなる解析を行う。
当該年度末にB-Aにあたる物品の注文をしたが、納品がされなかったため、次年度使用額が生じたが、ほぼ計画通りとなった。
ほぼ計画通りの予定である。
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