本研究は、研究代表者らが見出した小児AMLの予後不良マーカー「EVI1遺伝子及びMEL1遺伝子の高発現」について、リスク分類及び造血幹細胞移植治療選択における有用性を検証するとともに、その予後不良に至る作用機構を明らかにすることを目的としている。特に、治療層別化因子として臨床応用することに重点を置いて研究を進めて来た。 EVI1とMEL1は相同遺伝子であり、ともにPRドメインあり[PR(+)]/なし[PR(-)]の異なるisoformを産生する。MEL1高発現例は全例PR(+) isoformを主に発現しているが、EVI1高発現例にはPR(+) isoformを主に発現しているものとPR(-) isoformを主に発現しているものがあり、このisoformの違いが小児AMLの予後に与える影響がはっきりしていない。そこで、isoformの違いを認識でき、高い精度と再現性を実現できるアッセイ系としてnCounterシステムを採用し、EVI1/MEL1遺伝子高発現検査法の開発を行なっている。2018年度は、AML99研究登録症例からMEL1高発現例17例とEVI1高発現例16例を含む88例を選出し、そのRNA検体を用いて、開発したnCounterアッセイの検証を行った。その結果、極めて簡便・迅速に測定できること、測定したEVI1、MEL1発現量がマイクロアレイ測定値、定量RT-PCR測定値と高い相関性を示すこと、同一検体の複数回測定において高い再現性を示すことを確認した。また、まだ少数例の解析で今後の検証が必要であるが、小児AMLにおいてEVI1 PR(+) isoform高発現例とEVI1 PR(-) isoform高発現例は同数程度存在し、予後は同程度に不良であることが示唆された。今後、AML-05研究登録症例の検体を用いて、臨床的有用性についての検討を続けていく予定である。
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