研究実績の概要 |
エンテロウイルス(EV)感染症は毎年夏期を中心に小児で流行を繰り返す。その病型は不顕性から死亡事例まで多岐に渡る。EV感染症は重症化する場合があることが知られているが、重症化リスク因子は解明されていない。近年、我が国では生後1カ月齢未満の新生児でEV感染による脳炎、心筋炎、肝機能障害、死亡等の重症化事例の報告が相次いだ。これまで収集した疫学データを解析することで、EV感染症では比較的重症度の高い無菌性髄膜炎で新生児とコクサッキーウイルスB(CVB)群感染の関連が示唆された。そこで、本研究では、EV感染症を疑う新生児の疫学情報および検体を系統的に収集し、ウイルス検出・情報解析を実施し、新生児EV感染症におけるリスク因子を明らかにすることを目的とした。平成28年は協力医療機関から68名分の新生児検体が搬入された。そのうち28名から検査対象としたウイルスが検出された。6名分(21%)はEV/Rhinovirusの型別ができなかったが、型別できたものはCVB5(25%),RhinovirusA(14%),ヒトパレコウイルス(HPeV)3型(11%),Echovirus(Echo)9(7%),HPeV4,エンテロウイルス71,Echo6,Echo25,CVA69,CVB1(4%)であった。しかし、重症と定義した死亡、脳炎、脳症、髄膜炎、肺炎、心筋炎、麻痺、臓器機能不全と診断された新生児がなかったため、重症化に対するリスク解析は実施していない。 平成28年度は大阪府において小児ではヘルパンギーナが流行し、その主な原因ウイルスはCVA4であったが、新生児からは検出されず、また新生児で検出されたウイルスもヘルパンギーナや手足口病の小児ではほとんど検出されなかった。一方で、小児の無菌性髄膜炎患者から検出されたEVと新生児から検出されたEVは類似していることが再確認された。
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