研究課題
コクサッキーウイルスB(CV-B)群はエンテロウイルス(EV)属に分類され、主に小児を中心として夏季の上気道炎や胃腸炎の原因となるが、感染者のうち多くが軽症で経過する。しかし、新生児では国内外でCV-B群による死亡事例を含む重症者が多数報告されているが、新生児におけるCV-B群感染の危険性を評価した研究はほとんどない。そこで、ウイルス感染症を疑う新生児(生後28日齢未満)由来検体および疫学情報を収集し、ウイルス検出・情報解析を実施することで新生児CV-B感染症におけるリスク因子を明らかにすることを目的とした。2015年8月1日から2018年7月31日までに120名より検体が得られた。EV以外の病原体が検出されたものを除外し、解析対象を87名とした。EVが23名(26.4%)から検出され、検出が多い順にCV-B5(31%)、Echovirus9(E9)(26%)、E3、E6、E18(各9%)、CV-B1、E25、CV-A9、EV-A71(各4%)であった。期間中、新生児からCV-B5が夏季に集中して検出されたが、同時期の小児における手足口病およびヘルパンギーナ患者からはほとんど検出されなかった。一方、環境水(下水)検体からはCV-B5が新生児から検出されるより前から検出が終了するまで分離されていた。また、EVが検出された新生児では発症日齢及び兄弟を有している割合(各P<0.01)が有意に高く、家族内で何らからの感染症の流行があった(P=0.02)。EVは兄弟などの家族から新生児へ感染している可能性が示された。しかし、小児で手足口病やヘルパンギーナが流行している時期でさえ、新生児ではそれらの疾患から検出されるEVとは異なるCV-B5が多く検出されていた。よって、成人や小児では軽症あるいは不顕性で経過するCV-B群感染が免疫系の未熟な新生児でより顕性化しやすいと考えられた。
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