研究課題
糸球体構成細胞群の炎症経路群のToll様受容体3 (TLR3)を起点とする制御機構の詳細を検討し,将来的な慢性腎臓病 (CKD)の新規治療法開発につなげる目的で以下の検討を行った。培養ヒト糸球体内皮細胞 (GECs)における好中球の遊走・接着に関わるTLR3/IFN-β/CXCL1とTLR3/IFN-β/E-selectinの発現が示された。腎生検組織では好中球活性化の関与が大きい半月体形成性腎炎で内皮細胞領域に有意な CXCL1の発現が確認された。Plasminogen acitivator inhibitor-1 (PAI-1)は糸球体硬化に関与する。GECsにおける TLR3を起点とする PAI-1の発現と欧米での SLEの標準治療薬である抗マラリア薬 chloroquineの PAI-1発現に及ぼす影響を検討した結果,GECsではTLR3を起点とする PAI-1の発現増強が認められること,抗マラリア薬の前処置で PAI-1発現は有意に抑制されることが明らかとなった。腎糸球体構成細胞で産生されるinterleukin-6 (IL-6)は 腎炎の発症に関与していることから,GECsでの TLR3/IL-6の発現を検討した結果,IL-6の発現にはウイルス細胞質内受容体 retinoic acid-inducible gene-I (RIG-I)とmelanoma differentiated gene 5 (MDA5)も関与しており,GECs上のTLR3/IFN-β/MDA5/RIG-I/IL-6経路の存在が示された。GECsでのTLR3を起点とする炎症経路群の制御は CKDの新規治療法として有用となる可能性があり,chloroquineは候補となり得る。
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