研究実績の概要 |
小児期発症ネフローゼ症候群の約20%はステロイド抵抗性(SRNS)であり、特に病理学的に巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の組織像をとるものの約半数は末期腎不全へと進行するとされる。その原因は多岐にわたるが、遺伝子変異が原因のFSGS/SRNS(以下genetic FSGS)は、ミトコンドリア関連遺伝子変異など、治療が可能な症例がある、ステロイド等の免疫抑制治療に抵抗性のため早期に使用中止の判断ができる、など、その確かな遺伝子診断が、患者の治療選択や予後に直結する。 現在までFSGS/SRNSには50種以上の原因遺伝子が報告されている。これまでの報告の多くは欧米で行われていたが、我々は2012年から日本人小児FSGS/SRNS患者にエクソーム解析を施行し日本人の特徴を初めて報告した(J Hum Genet.61:771-2, 2016)。この検討により既報の遺伝子変異が日本人でほとんど検出されないことが明らかになった。さらに解析を行ったところFSGS/SRNSによる腎移植患者の半数に遺伝子変異が確認され、原因遺伝子としてNUP107 が半数と最多であるなど、その遺伝的背景が欧米とは大きく異なっていることを明らかにした。また本邦の患者に特有の変異/バリアントがその発症に関与することが明らかになった。バリアントの病原性の判断が不十分であることが、近年大きな問題となっている(Nature. 508:469ー76,2014)。そこで我々は、病原性不明な変異への機能解析にも着手した。一例として、新規のNUP93 遺伝子変異やCRB2遺伝子の日本人FSGS症例を初めて報告し、その病原性の機能解析し報告した(Kidney Int Rep. 4,1312-1322, 2019, Pediatr Nephrol 32:801-809, 2017)。
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