研究課題
最終年度は、先天性心疾患患者の網羅的ゲノム解析と情報科学的解析による候補遺伝子探索、さらにはアンチセンスモルフォリノによる一次スクリーニングを経て、選定した2つの機能未知遺伝子LZTR1およびDNAH10について、CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子改変疾患動物モデリングによるin vivo機能解析を行った。LZTR1は円錐動脈幹奇形と肥大型心筋症の家系から得られた候補遺伝子であるが、昨年度に得られたLZTR1改変ゼブラフィッシュのヘテロ欠失体の交配によりホモ化に成功した。組織学的解析によって、LZTR1ホモ欠失ゼブラフィッシュの心臓表現型は患者病態と同様に心室肥大を再現していた。さらに免疫組織染色によって、LZTR1の下流シグナルの一つとして、ERKを同定し、本疾患のRAS/MAPK症候群(Noonan症候群類縁疾患)とのオーバーラップが示唆された。これら機能解析の結果については国際誌に投稿中である。また、本研究成果をもとに、RAS/MAPK症候群関連心臓病の病態生理の理解に向けて研究を展開し、PRAS/MAPK症候群関連心臓病を有する別の患者の心筋の病理組織においてKi-67陽性細胞の異常な増加を見出し、ヒトで初めて心筋細胞増殖の所見を発見し国際誌に報告した。内臓錯位症候群の患者の解析から得られた候補遺伝子であるDNAH10に関しては、マウス受精卵の遺伝子改変を実施し、機能喪失アレルを得た。DNAH10改変マウスのF0個体は不妊となり、系統維持・継代が困難であった。仕方なくF0個体を解析することとなったが、残念ながらDNAH10改変F0マウスは目的の患者表現型(内臓錯位)を呈さず、疾患原因遺伝子としての証拠を掴むことは出来なかった。現在は、疾患感受性を修飾する遺伝子(modifier gene)としての関与を想定し、解析を続けている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
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