川崎病は主に乳幼児に発生する急性熱性疾患であり、全身の血管炎を特徴とする。様々な原因因子や遺伝的素因について報告があるが、それらが川崎病すべての症例の原因として証明されていない。我々は末梢血の遺伝子発現やヒト冠動脈内皮細胞による刺激実験などから、川崎病の発症に自然免疫が大きく関わっていることを明らかにした。さらに、自然免疫の一つであるNod1のリガンドをマウスに投与することにより、川崎病類似冠動脈炎が起こることを報告した。川崎病の原因は未だ不明であるが、川崎病の疫学的特徴である季節性・地域性に関する研究では、それを証明しうる特異的物質を検出できている。現在、構造解析中であり、判明すれば特異的にマーカーになる可能性も考えられる。 本研究において川崎病類似Nod1リガンド誘発冠動脈炎モデルを使ったmTOR阻害薬による炎症惹起作用抑制についての研究を行った。FK565(Nod1リガンド)を川崎病特異的物質と想定し、様々なmTOR阻害薬により冠動脈炎が改善するかについて検討を行ったところ、mTOR阻害薬の中のテムシロリムスにより冠動脈炎の改善を認めた。mTOR阻害薬にはオートファジー亢進機能があるため、オートファジー亢進により、冠動脈炎が改善したと仮定し、オートファジー抑制機能があるバフィロマイシンで冠動脈炎の悪化がみられるかを確認したところ、悪化はみられなかった。また、ヒト冠動脈内皮細胞でのin vitro実験でもサイトカイン上昇所見はなかった。以上より、テムシロリムスによる冠動脈炎改善はオートファジー以外の効果によるものと考えられた。
|