研究課題
HBV遺伝子変異と、HBs抗体エスケープ変異ウイルス、肝細胞癌、劇症肝炎、などとの関係が示されており、抗ウイルス治療の際に出現する薬剤耐性ウイルスの存在も問題となっている。B型慢性肝炎におけるHBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョン(以下、SC)では、成人に於いてはコア領域やプレコア領域の変異が関与することが報告されている。小児B型慢性肝炎例のSC前後の検体を用い、SC前後でのHBV遺伝子変異について検討した。【対象】1983年~2008年にSCを起こした小児B型慢性肝炎8例。(男4例、女4例)ジェノタイプはAが2例、Cが5例、Dが1例。定期受診中に採血を行い、SC前後と、検体の存在する限りで最も古い時点、検体の存在する限り最も新しい時点、の計4点を調査した。全ての患者は臨床的に母子感染と診断している。2例はフォローアップ期間中にインターフェロンによる治療が行われ、HBe抗原が陰性化した。他の6例は抗ウイルス薬の投与は受けていない。フォローアップ開始年齢は1歳3ヶ月~11歳11ヶ月で、フォローアップ期間は平均3.0年であった。【方法】特異度の高いプライマーを用いてB型肝炎ウイルスゲノムのうちプレコア、コアプロモータ領域をPCR法にて増幅し、ダイレクトシークエンスにて塩基配列を決定した。【結果】8例中2例でプレコア領域に変異(G1896A)を認めた。コアプロモータ領域の変異は認めなかった。SC後は全例が無症候性キャリアとなった。【考察】小児B型慢性肝炎例では、HBV遺伝子のコア領域、コアプロモータ領域の変異があまりみられない。成人と小児におけるこの差はホストの免疫状態の違いによると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
セロコンバージョンを起こした小児B型慢性肝炎例を対象にHBV遺伝子のプレコア、コアプロモータ領域の解析を行った。小児の場合は成人と比較してコア領域、コアプロモータ領域の変異があまりみられないことが示された。今年後以降は、セロコンバージョンを起こしていない小児HBVキャリアも対象とし、次世代シークエンサーを用いて、網羅的なHBV遺伝子解析を実施する。
引き続き、対象症例の収集を行う。今年後以降は、セロコンバージョンを起こしていない小児HBVキャリアも対象とし、次世代シークエンサーを用いて、網羅的なHBV遺伝子解析を実施し、臨床病態との関連が分かっているHBs抗原変異、コアプロモータ・プレコア変異、X遺伝子変異、薬剤耐性変異等を持つウイルス株の存在頻度も明らかにしたい。
Ion OneTouch systemによるエマルジョンPCRを、作業効率を考慮して次年度に行うこととしたため。
集積した検体を用いてIon OneTouch systemによるエマルジョンPCRを一括して行う。
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