研究課題/領域番号 |
16K10070
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝一 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00444977)
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研究分担者 |
齋藤 伸治 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00281824)
杉浦 時雄 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10381881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HBV / 小児 / 母子感染 / ワクチン / ワクチンエスケープ変異 |
研究実績の概要 |
HBV遺伝子変異と、HBs抗体エスケープ変異ウイルス、肝細胞癌、劇症肝炎、などとの関係が示されており、抗ウイルス治療の際に出現する薬剤耐性ウイルスの存在も問題となっている。近年、本邦ではHBVワクチンが定期接種化されたが、これによりHBs抗体エスケープ変異ウイルスの相対的増加が懸念されている。HBs抗体エスケープ変異ウイルスによるHBV母子感染が疑われた例について遺伝子解析を行った。 【対象】2歳女児【家族歴】母、姉がHBVキャリア【経過】HBVキャリア母体(HBe抗原陽性)から自然経膣分娩で出生し、同日HBIGと、HBVワクチン接種を受けた。その後、総計3回のHBVワクチン接種を受けた。9ヶ月時、HBs抗原陰性、HBs抗体≧1000 mIU/mL。1歳6ヶ月時、HBs抗原陰性、HBs抗体 333.8 mIU/mL。2歳8ヶ月時、HBs抗原陽性、HBs抗体 115.6 mIU/mL、ALT 12 IU/l、HBe抗原陽性、HBe抗体陽性、HBV DNA 3.5LogIU/mL。 【方法】特異度の高いプライマーを用いてB型肝炎ウイルスゲノムのうちプレコア、コアプロモータ領域をPCR法にて増幅し、ダイレクトシークエンスにて塩基配列を決定した。 【結果】HBV遺伝子解析でG145R、P120Q変異を認めた。母、姉にも同じHBV変異株を認めた。 【考察】G145R、P120Q変異はHBs抗体エスケープとなる変異であることが過去に報告されている。HBs抗体エスケープ変異株による母子感染でることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HBs抗体エスケープ変異株による母子感染が存在することが示された。 未解析の症例もあるため、引き続き、対象症例を収集し、解析を継続したい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、対象症例の収集を行う。 セロコンバージョンを起こしていない小児HBVキャリアも対象とし、次世代シークエンサーも用いて、網羅的なHBV遺伝子解析を実施し、臨床病態との関連が分かっているHBs抗原変異、コアプロモータ・プレコア変異、X遺伝子変異、薬剤耐性変異等を持つウイルス株の存在頻度も明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析対象症例が見込みよりも少なかった。 引き続き対象症例を収集する。 繰越金は新規対象者の遺伝子解析費用に充てる。
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