研究課題
研究目的:我々は、KD急性期患児の便中DNA分析から、本来St.pyogenes (GAS)が保有するスーパー抗原(SAg)遺伝子が有意に多く検出されることを明らかにした(J Pediatr 2009;155:266-270)。この新たな知見に基づき、口腔・咽頭に存在し、病因への関与が想定していない常在菌(主にレンサ球菌)に、本来GASが保有するSAg遺伝子のtranferの可能性を想定し、そのSAg遺伝子を保有する細菌種を同定し、KD発症への関与を解明することが目的である。この1年間は、以前からストックしていた咽頭菌についても検討した。平成26年10月から平成29年4月までに川崎病診断基準を満たして当院に入院した川崎病患児75例を対象とした。入院時時に咽頭ぬぐい液を採取して、液体培地(Brain-Heart Infusion Broth)を用いてovernightで増菌培養し、DNA Mini Kit (QIAGEN)を用いて全DNAを抽出し、4つのスーパー抗原遺伝子(SPE-A, SPE-C, SPE-G, SPE-J)断片についてPCRで検討した。当初は陽性率が低かったので様々なPCRの条件を変更し、Tmを45℃に変更することでスーパー抗原遺伝子断片の検出率がかなり改善された。その結果、75例中、個々のスーパー抗原遺伝子について陽性例は、SPE-A:4例、SPE-C:8例、SPE-Gが18例、SPE-Jが4例、と陽性症例が増加した、2つ以上のスーパー抗原遺伝子が検出されたのは4例で、SPE-AとSPE-Jが1例、SPE-AとSPE-Gが2例、SPE-CとSPE-Gが2例であった。得られた咽頭培養液を-80°に保存した。PCR陽性反応の出た培養液を用いて、スーパー抗原遺伝子を持つ菌の菌種同定へ進めたい。
3: やや遅れている
新規に発症した川崎病症例の組み入れは順調であるが、スーパー抗原遺伝子検出率が悪く、培養方法、PCRの条件設定を模索する必要に迫られ、難渋している。しかし、最近、漸く検出率が改善できるPCR条件設定を見出したので、過去の症例に遡って再検討中である。
最近見出したPCR条件設定によって、スーパー抗原遺伝子断片の検出率は改善しており、遅れを挽回すべく実験を進めている。
PCR反応の条件(各種スーパー抗原検出のための最適Tm値)設定を、再検討する必要が生じたため、研究に遅れを生じている。このため、次年度使用額が生じた。しかし、PCR検出率が改善したので、次年度ではスーパー抗原検出のためのPCR反応と菌種同定に使用する予定である。
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