小児慢性腎疾患において世界的に重要な位置を占める、小児特発性ステロイド感受性ネフローゼ症候群(小児ISSNS)の病態解明に寄与する知見を得て、その発症予防・治療薬の開発を促進させることを目的として、本研究を開始した。この目的のために、小児ISSNSに対する転写因子STAT5Bの関与・役割を解明することを試みた。 昨年度得た結果をもとに、今年度も引き続き、本実験を継続した。 検体として、保護者ならびに本人に、インフォームドコンセント・アセントを行い、書面で承諾を得られた小児ISSNS患者の、(1)ステロイド治療開始前ネフローゼ期、(2)ステロイド治療下寛解期、(3)ステロイド治療終了後寛解期、の、一連の末梢血を用いた。この検体を用いて、STAT5B発現量が、病勢に伴い変化していることを確認した。続いて、上記検体を用いて、ChIP-seqを行い、STAT5B結合部位のピークを検出し、ピーク値の変化を検討した。小児ISSNSの病勢とともに、ピーク値の変動を示す結合部位を検出した。このSTAT5B結合部位の下流に、小児ISSNSの徴候を説明しうる遺伝子の存在を確認した。このSTAT5B制御候補遺伝子の発現量を、RT-PCR法により計則し、この結果を踏まえて、検出候補発現制御遺伝子の小児ISSNSに対する役割の検討を進めていく予定である。
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