研究実績の概要 |
心臓組織再構築における血管形成と移植細胞の生着率改善を目指して血管内皮前駆細胞を含んだ細胞環境調節細胞群シート移植を行い、重症心不全治療法としての有効性について検討した。近年確立された無血清培地生体外増幅培養法(quantity and quality control culture; QQ培養)を用い、末梢血液中の単核球を培養したQQ細胞群(再生環境細胞群)を用いた。この細胞群は、血管再生以外に抗炎症・抗線維化及び免疫寛容作用を持つ細胞群であることが先行研究で示唆されている。心筋炎による重症心不全モデルラットを作製し、QQ細胞シート(線維芽細胞とのco-culture)移植群と線維芽細胞シート群及びコントロール群(sham)の3群間で移植効果を比較検討した。移植する細胞シートにたいしqPCRを行った結果、QQ細胞シートでCD206, VEGF, IL-10のmRNA発現が優位に高く、M2マクロファージの増加による抗炎症作用、VEGFによる血管の形成促進、IL-10による免疫寛容能等が示唆された。QQ細胞群における左室圧容積関係解析では、拡張末期容量/拡張末期圧が有意に高く、組織学的評価では血管数の増加と繊維化率の低下を有意に認めた。これは、抗炎症作用による線維化抑制作用が心臓拡張能を改善したものと推察された。以上のことから、本法が重症心不全に対する治療法として有効である可能性が示唆された。
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