研究実績の概要 |
本年度は、動脈管酸素刺激時のメタボロミクス解析を、肺動脈を対象として実施した。分析に必要な試料量は、30-40mg 程度であることから、計6匹の妊娠21日目のラットから計66匹の満期胎仔を得、動脈管(計29.9 mg)及び主肺動脈(計28 mg)を冷生理的食塩液中で採取し、酸素(95%O2-5%CO2)刺激を与え、液体窒素で急速凍結し-80℃で保存した。質量分析法によるメタボローム解析は、キャピラリー電気泳動(CE)と質量分析(MS)による水溶性イオン性物質の同定と定量を行った。CE-MS はエネルギー代謝などによって変動する水溶性イオン性物質の分離に有効な手法である。 肺動脈より動脈管において、目的ピークの面積値を内部標準物質の面積値(x試料量)で除した相対面積値の比として2以上を示したものは、カルニチン, グルタミン, Isethionic acid,Toluic acid, パントテン酸であった。1.5以上を示したものは、hypotaurine, Acetylasparatic acid, NADPH divalent, アセチルカルニチン, Spermidineであった。パントテン酸はCoA合成に用いられる。カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内部に運搬する。脂肪酸はβ酸化を受け酢酸にまで分解され、生成したアセチルCoAはクエン酸回路を通じてエネルギーに転換される。アシルCoAはカルニチンと結合しアシルカルニチンへと転換される。アシルカルニチンはミトコンドリア内部に運搬され、アシルCoAへと転換される。フリー体のカルニチンは細胞質に戻る。このように解釈すれば、満期胎仔の動脈管は、肺動脈に比べて、アセチルCoAを中心としたエネルギー産生能が高いと推定された。 また、動脈管に発現する低分子量ヒートショックタンパク質のリン酸化の研究のための試料の調製はすでに進めており、電気泳動・ウェスタンブロッティング・リン酸化の検出作業を近く開始したい。
|