研究実績の概要 |
遺伝性不整脈のうち主たる疾患遺伝子として、心筋のK+チャネル、Na+チャネルをコードする遺伝子が報告されている。細胞膜へのチャネル蛋白のtrafficking異常は、心筋のK+チャネル、Na+チャネル遺伝子異常、または薬物等によって引き起こされ、不整脈の原因となっていることが解ってきている。 近年、小胞体内に不良タンパク質が蓄積すると細胞が障害される「小胞体ストレス」が、多くの疾患の原因として注目を集めてている。本研究では、QT延長症候群の主たる成因蛋白である、心筋のK+チャネル、Na+チャネルに対する、小胞体ストレスを引き起こす因子の検討、および、それを回復させる可能性について検討し、不整脈疾患の新しい発症予防法や治療法の創出につなげることを目的とした。 心筋のNa+チャネル遺伝子である、SCN5A(Nav1.5)遺伝子に、R1623Q (g4868a, CGA→CAA)を導入した変異型発現ベクターを、HEK 293細胞に導入した細胞を用いて、R1623Q変異型ヒトNav1.5チャネルの、安定細胞株(Stable cell cline)を作成した。この安定した細胞株(Stable cell cline)を用いて、野生型(WT)と変異型(R1623Q)のそれぞれにフェキソフェナジン、レスベラトロール、エストロゲン、プロゲステロン添加し投与前後のパッチクランプを行い、発現電流の変化を確認する実験を行った。変異型(R1623Q)ヒトNav1.5チャネルにプロゲステロンを投与した後のみ、発現電流の減少が認められた。今後、この現象が小胞体ストレスにより引き起こされたか等詳細な検討を行い、不整脈疾患の新しい発症予防法や治療法の創出につなげることが必要である。
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