研究課題/領域番号 |
16K10079
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
大橋 隆治 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00328783)
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研究分担者 |
深澤 隆治 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80277566)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 川崎病 / 血管炎 / エクソソーム / マクロファージ / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト川崎病に類似した血管炎像を呈するCandia albicans water soluble-induced (CAWS) 血管炎モデルマウスモデル、およびヒト川崎病患者の血清や尿を使用し、川崎病血管炎発生における炎症、免疫応答、その過程でのエクソソームの役割を明らかにすることにより、ヒト川崎病の病態解明、および治療手段を確立することである。 ①昨年度に引き続き、研究分担者の深澤が以前作製した、CAWS 血管炎モデルマウスモデルおよびコントロール群の心臓のパラフィン固定標本を各10匹づつ使用し、エクソソーム関連蛋白の同定を試みた。また、各種炎症細胞の動態について、形態学解析を施行した。さらに、エクソソーム、DNAの同定のため、in situ hybridization も施行した。 ②マウス血清中のエクソソーム分画とそれ以外の分画からのmiRNAを試みた。10匹を1つの検体として、コントロール群と血管炎活動期からmiRNA抽出を行い、miRNA ready-to-use PCR mouse & rat panel I+II (Exiqon) を使用してReal time-PCR に基づくmiRNA の網羅的解析を試みた。 ③昨年度からは、これらの動物実験に加えて、新たにヒト川崎病患者5名の冠動脈標本を入手し、組織学的、免疫動態の解析に関する実験も並行して開始した。特にmacrophage phenotypeを免疫染色にて同定することにより、川崎病における血管炎発症メカニズムの解明を試みた。対照群としては成人の動脈硬化標本を使用した。M1のマーカーとしては、CD86, SOCS3を、M2 のマーカーとしてはCD163, MRC1 を使用した。その結果、川崎病ではM1 phenotypeが、成人動脈硬化病変ではM2 phenotype が有意であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
① CAWS 投与によりマウス血管炎を作成したが、個体ごとに血管炎の程度にばらつきがあり、CAWS 作成を繰り返す必要があった。 ②昨年同様、マウス血管組織から、エクソソームを抽出し、その後の解析を試みたが、miRNAが微量であること、またmiRNAの変性が強く、再現性の高い結果が得られなかった。 ③ヒト川崎病患者の冠動脈標本に対し、macrophage phenotype M1/M2の免疫染色を行うにあたり、複数の抗体を使用してpreliminary study を数回施行した。いずれの抗体も希釈倍率や前処理の条件が異なるため、適切な抗体、条件を確立するためにかなりの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
①追加でCAWS モデルマウスを作成し、組織、尿からmiRNA を抽出し、血清と同様にmiRNAの網羅的解析を行う。血清中のエクソソーム分画とそれ以外、心組織、尿を比較し、血管炎発症に関連するmiRNA を同定する。 ②同定されたmiRNA について、CAWS モデルマウス惹起後の組織変化を評価する。 ③ヒト川崎病患者の冠動脈標本におけるmacrophage phenotypeと免疫応答に関する免疫組織学的解析を、患者数をさらに増やして行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:血管炎作成に手間取り、血清からのエクソソーム分画とそれ以外の分画からのmiRNAを十分、抽出することができなかったため、その後予定されていた実験が施行できなかった。 ヒト川崎病患者の冠動脈標本における免疫組織学的解析では、抗体の選別や条件設定に時間を費やしてしまいデータ解析の段階まで到達できなかった。 使用計画:新たなCAWSモデルマウスの作成、心臓、血清、尿検体を用いたより高品質なmiRNAの抽出。現在使用しているキットは、やや感度が劣るため、異なるメーカーの抽出キットも試す必要があると考える。また、ヒト川崎病患者の冠動脈標本におけるmacrophage phenotypeと免疫応答に関する免疫組織学的解析を、新たな抗体や手法を導入することにより、より規模を拡大して行う。
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