研究課題/領域番号 |
16K10081
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
金子 一成 関西医科大学, 医学部, 教授 (00214453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微小変化型ネフローゼ症候群 / PANラット / トランス型レチノイン酸 / カルシトリオール |
研究実績の概要 |
小児の腎疾患としては比較的有病率の高い特発性ネフローゼ症候群、特に微小変化型ネフローゼ症候群の病因はいまだに解明されていないが制御性T細胞(Treg)の質的・量的異常が示唆されている。 ビタミンA とビタミンD は、これまで認識されていたビタミンとしての機能以外に、近年、免疫調節作用を始めとする様々な機能を有することが明らかとなり注目を集めている。ステロイドに比して圧倒的に副作用の少ないビタミンA やビタミンD によって 微小変化型ネフローゼ症候群の病因と考えられているTregの異常を是正できれば、本症の治療薬になりうるのではないか、という着想で本研究を開始した。 まず平成28年度は、微小変化型ネフローゼ症候群のモデルラットを確実に作成することを目標としたが、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(Puromycin Aminonucleoside: PAN)を50mg/kg静注することで確実にタンパク尿をきたす微小変化型ネフローゼ症候群を再現するモデルラット(PANラット)が確立できた。このPANラットにVitamin A(トランス型レチノイン酸:ATRA)を2.5mg/kgまたは5.0mg/kgの用量を1日1回、連日(9日間)皮下注したところ、尿タンパク量は減少した。Vitamin D(1α-25(OH)2D3:カルシトリオール)についても、0.4 µg/kgの用量を1日1回、連日9日間、腹腔内投与したところ、尿タンパク量は減少した。さらにVitamin AとVitamin Dの両者を同時に併用することで抗蛋白尿効果について相加的に作用する可能性も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28 年度は、安定して微小変化型ネフローゼ症候群のモデル動物を作成することを目標としたが、その点は達成できたと考えている。 また当初は平成29年度に予定していた微小変化型ネフローゼ症候群のモデル動物におけるビタミンA やD の抗蛋白尿効果を検証するという実験もほぼ完了できた。 以上の進捗状況から上記のように自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は微小変化型ネフローゼ症候群のモデル動物において確認できた、ビタミンA やビタミンD の抗蛋白尿効果の作用機序を検討する予定である。 すなわち、ビタミンA やビタミンD が腎糸球体のポドサイトに作用しているのか、末梢血のTregに作用しているのか、を明らかにするするために、T 細胞機能欠如ラットでもPAN 腎症が発症するか否か、発症する場合、そのようなラットでもビタミンA やビタミンDが抗蛋白尿効果を発揮するか否かの検討を行う。また一部の対象については蛋白尿のピークの時期(PAN 投与後9 日目)に屠殺し、血液と腎組織の採取を行いビタミンAやビタミンD の投与群と非投与群で比較検討する。すなわち血中の蛋白濃度、コレステロール濃度を一般生化学自動測定機器で測定する。また血中のリンパ球分画(T リンパ球やB リンパ球、Th1、Th2、Treg やTh17)についてもフローサイトメーターで測定する。さらにTGF-β, CTLA-4 やIL-10の血中濃度をELISA で測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ネフローゼモデル動物の作成実験において予想よりも順調に実験が進捗し、予定よりも少ない実験回数で済んだため、実験動物代金や試薬代金に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には微小変化型ネフローゼ症候群のモデルラットのリンパ球サブセットや屠殺腎組織における、ネフローゼ関連分子群の蛍光免疫染色を予定しているが、予算の許す限りより多くの関連分子の検討を行いたい。今年度生じた差額はその抗体購入費用に充てる予定である。
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