研究課題/領域番号 |
16K10082
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
竹下 誠一郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他, 教授 (50369542)
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研究分担者 |
川村 陽一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 小児科学, 助教 (10648801)
野々山 恵章 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 小児科学, 教授 (40280961)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 川崎病 / 血管炎 / 好中球細胞外トラップ / NETosis |
研究実績の概要 |
好中球の病原体処理機能として貪食作用が知られているが、近年Brinkmannらは核内のクロマチンで構成される網目状の構造物に好中球elastase(NE)やmyeloperoxidase(MPO)などの抗菌蛋白が付着した好中球細胞外トラップ(neutrophilextracellular traps, NETs)を細胞外に放出することによって病原微生物を捕捉・殺菌するという新たな細胞外殺菌機構を発見した。この過程は従来のnecrosisやapoptosisとは異なるタイプの細胞死ということでNETosisと名付けられた。NETosisに伴って細胞外に放出されたDNAやヒストン及び抗菌蛋白は生体防御機構に関与する反面、強力な組織傷害性を発揮する。NETsの放出によって血管内皮細胞傷害が引き起こされるとともに、血小板が活性化されて血栓形成の原因となりうる。 我々は川崎病(Kawasaki disease, KD)の病態におけるNETsの関与を検証するため、KD急性期患者の末梢血から分離した好中球をin vitroで培養し、HoechetによるDNA染色、MPO染色、NE染色によってNETs形成を観察した。その結果、KD急性期でNETs形成を認めたが、KD回復期や健常コントロールでは認めなかった。さらにNETsの定量として、培養上清中のcell-free DNAのリアルタイムPCR、NE/DNA複合体のELISAを実施したところ、KD急性期および回復期から分離した好中球を培養したものでは、健常コントロールのものと比べて、いずれも高い傾向にあった。さらに急性期と回復期との比較では、急性期のものがより高い傾向にあった。以上から、KD急性期から回復期にかけてNETs形成が亢進しており、KD血管炎の病態にNETsが深く関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
川崎病(Kawasaki disease, KD)の病態におけるNETsの関与を検証するためには、KD急性期患者の末梢血から分離した好中球をin vitroで培養して、免疫染色(HoechetによるDNA染色、myeloperoxidase(MPO)染色、elastase(NE)染色)する必要がある。好中球の寿命は短いため採血後すぐに処理する必要があり、夜間や休日等に入院した患児からの検体を得られない場合がある。また、KD患児のほとんどは1歳前後の乳幼児であるため、1回の採血量は数mlに限られ、十分な好中球数を得られない場合も多い。当院では年間40例近いKD患児の入院があるが、現時点で得られたデータは10数例のみである。さらに、KDの対照群として健常コントロール群が必要になるが、informed consentを得る必要があるてめ、現時点では数例のみである。従って、現在までの進捗状況は、当初の計画に比べて「やや遅れている」。
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今後の研究の推進方策 |
研究自体は良好な結果が得られつつあるため、基本的な方針は今後も変更しない予定である。研究の対象患児数がなかなか集まっていない現状に対する方策として、①研究グループとして、夜間や休日等に入院した患児からの検体にも対応できる体制を作る、②周辺の関連病院や医療施設に協力を呼び掛けてKDの検体を得る、③対照群である健常コントロールのデータ数を増やすことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に関しては、予備実験を含めて、科研費が支出される以前に実験を開始していた。当該年度の研究に必要な物品は既に購入していたため、当該年度の物品費から支出する必要がなかった。また、所属する大学の研究費から旅費を捻出したため、当該年度の旅費を使用する必要がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は以下の通りである。 物品費(好中球分離キット、モノクロナル抗体を含めた各種の試薬、Cell Death Detection ELISA kit、NETosis assay kit、プラスティック器具など1,500,000円)、旅費(国内旅費300,000円、学国旅費300,000円)、その他(英文校正及び論文投稿料など300,000円)
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