研究課題/領域番号 |
16K10087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 正彦 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (00270877)
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研究分担者 |
藤代 準 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60528438)
新 幸二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60546787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 母乳 / IgA / IgA-seq |
研究実績の概要 |
バクテリアソーティング(IgA-SEQ)の実験系の確立が本研究の遂行には必須であったが、以下の理由により難渋した。①糞便から純度の高いバクテリア液を抽出することが非常に難しかった。糞便にはバクテリアと同程度の大きさの糞便夾雑物が無数に含まれていて、これを完全に除去することが困難であった。IgA-SEQは、フローサイトメトリー解析前にバクテリアの純度を上げるの事が重要であるが、本年度に行なった実験結果から、ある程度の夾雑物のコンタミネーションは致し方ないことが理解できた。②フローサイトメトリー解析時のバクテリアfraction設定に難渋した。本年度に行なった実験結果から、バクテリアは、その形状、大きさ(長さや幅)が多種多様であるため、フローサイトメトリー上の初期設定(FSC(バクテリアの長さ)・SSC(バクテリアの太さ)ゲート)上で、広範囲に分布することがわかった。そこで、FSC・SSCゲートを平均的なバクテリアの大きさにあわせるようにminimumに設定し、広い範囲を選択することで、バクテリアを可能な限り認識できるよう設定した。③バクテリア・ソーティング時にフローサイトメトリー回路内にバクテリアが接着し、その影響でコンタミネーションを起こす。この問題に対処すべく、各サンプルのソーティング間の洗浄時間をできるだけ長く行なうこととした。以上の実験結果をふまえ、東京大学学内でのヒト由来試料取り扱いに関する倫理審査の進行状況が遅延していることから、始めに健常ヒト成人ボランティア6名の便サンプルを用いてIgA-SEQを行なった。結果、ヒト成人では、IgA結合細菌が多い群、IgA結合細菌が少ない群、さらに中間群の3群に分類できた。また、IgA結合細菌とIgA非結合細菌は個体間で一様ではなかったが、IgA結合細菌はFirmicutes(門)が圧倒的に多い結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①糞便サンプルからの純度の高いバクテリア液の抽出②フローサイトメトリー解析時のバクテリアfractionの細かい設定③バクテリア・ソーティング時のコンタミネーション等の問題から、IgA-SEQ実験系の立ち上げに難渋している。さらに、④東京大学学内でのヒト由来試料取り扱いに関する倫理審査の進行状況が遅延しているため、新生児糞便や母乳サンプルの確保が得られておらず、研究試料を用いた解析にいたっていない。
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今後の研究の推進方策 |
IgA-SEQの制度をさらに高めるため、糞便サンプルからの純度の高いバクテリア液の抽出を目的に、バクテリアに結合したIgAを標的としたMACSビーズの使用(MACS purification)を行なう。また、フローサイトメトリー解析時にDAPIなどのバクテリア核染色を追加し、Bacteria fractionの純度向上に努める。加えて、ヒト由来試料研究利用に関する東京大学学内での倫理審査が最終段階に入っている。本倫理審査が受理され次第、新生児の糞便を回収し、ヒト試料を用いたIgA-SEQを行って、母乳中分泌型IgAの新生児正常腸内細菌叢形成におけるIgAの役割を検証する。また、母乳が得られ次第、母乳中分泌型IgAによる腸内細菌叢形成と腸管免疫系確立への関与の検討をマウスモデルを使って検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残金が発生し、次年度使用額が生じている
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次年度使用額の使用計画 |
研究経費に使用予定
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