研究実績の概要 |
近年,周産期医療の進歩とともに新生児血栓症の報告が増加している。感染症,心疾患や仮死がそのリスクファクターになり,新生児特有の状況がその理由である。また早産児では中心静脈カテーテルを長期間留置することが多く,これも血栓症に留意しなければならない理由の一つである。しかし,新生児における血栓形成のメカニズムやその予防,治療に関しては明確な報告はない。今回,血栓症発症の病態を知るために,同様に血栓に留置する必要がある川崎病で上昇する血小板好中球凝集体とMatrix metalloproteinase 9 (MMP-9)の測定を計画した。 今年度,収集した検体をフローサイトメトリーにてCD11bとCD41のdouble positiveの細胞 (血小板好中球凝集体)の割合を測定した。そしてそれらの原疾患,採取日齢 (0~247),在胎週数 (29~40週),出生体重 (720-3516g),仮死の有無 (アプガースコア6点以下21検体),PIカテーテル留置の有無 (留置中18検体),頭部MRI検査結果等と比較した。その結果,日齢が進むとともに有意に変化した。また出血を起こした児や血栓症のリスクが高い児ではコントロールと比べ違いを認めた。加えてPIカテーテル留置の有無でも差がある傾向があった。しかし実際に血栓症を発症した症例がなく,今後の症例の積み重ねが必要であるとともに,まだ発達を観察している段階であり,この点に関しても検討が必要であると考えられた。
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