研究課題/領域番号 |
16K10092
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
日下 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50274288)
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研究分担者 |
安田 真之 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (00380155)
小谷野 耕佑 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (20437685)
岡田 仁 香川大学, 医学部, 准教授 (30253272)
三木 崇範 香川大学, 医学部, 教授 (30274294)
岩瀬 孝志 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (30284368)
上野 正樹 香川大学, 医学部, 教授 (30322267)
中村 信嗣 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (30437686)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 新生児黄疸 / ビルルビン / 脳酸素消費率 / 抗酸化作用 / 抱合ビリルビン / 近赤外光 / HPLC |
研究実績の概要 |
新生児黄疸を認める動物はヒトとアカゲザルのみであり、その生理作用の意義はビリルビンの抗酸化により、生後の急激な血中酸素分圧の上昇に伴い増加する活性酸素を消去して、組織障害を軽減する事にあると考えられる。本研究課題の目的は、ヒトの新生児黄疸の主たる要因であるビリルビンIXαの変動(生後の増加後の減少)と、活性酸素種産生量の主たる要因と考えられる組織酸素消費率の変動(増加)との関連性を見出すことである。特にヒト特有で酸素消費量が最も多い臓器は脳であるため、脳酸素消費率に着目して検討を行う。つまり「ヒトの生後早期における抗酸化作用を有するビリルビンと脳酸素消費率の変動の関連性」を検討し、生理的黄疸の意義を、ヒト固有の脳酸素代謝の成熟による変化を基に裏付ける事を最終的目的とする。研究計画としては、動物実験での酸素消費率の基礎的検討を行うと同時に、HPLC等による血清、尿中ビリルビンと抱合体の測定とビリルビン酸化物質の分析法の確立を行う。その方法を用いて、早産児、正期産児を対象として、経時的に測定を行う。そして総合的に、血清(ZZ)-ビリルビンIXαとビリルビン抱合体と脳酸素消費率の生後発達の関係を検討し、ビリルビン抱合能の上昇時には酸素消費率が増加するか否かを見出す。またその間にビリルビン酸化物質としてのビリベルジン、尿中プロペントディオペント物質の変化も検討し、脳酸素消費率が増加した場合、それらが減少するか否かを見出す。さらに酸素障害に関連する疾患を発症した児においても経時的に測定し、それらの疾病での特徴的所見を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
早産児は成人と比べグルクロン酸抱合能が低いにもかかわらず、血中抱合ビリルビン濃度が高値を示すことがある。この要因は、抱合ビリルビンの排泄に関わるATP-binding cassette subfamily C member 2 (ABCC2)機能の発達的変化の関与の可能性が考えられる。尿中のcoproporphyrin I/ (coproporphyrin I + coproporphyrin III)比 [(UCP){I/(I+III)}] は、ABCC2機能のバイオマーかとして利用可能であると報告されていため、本研究において早産児における尿中コプロポルフィリン(UCP){I/(I+III)}の発達的な変化を検討した。対象は在胎25週から32週の21例の早産児で、生後24時間以内、生後1週、生後3~4週に採尿した。その検体を用いてUCP {I/(I+III)}を高速液体クロマトグフィーで測定し、UCP {I/(I+III)}と生後日齢及び受胎後週数との関係を検討した。肝機能障、胆汁うっ滞、尿路感染症、染色体異常は除外した。その結果、UCP {I/(I+III)}の平均(標準偏差)は生後24時間以内0.84 (0.059)、生後1週0.61 (0.14)、生後3-4週0.65 (0.15)であった。生後24時間以内のUCP {I/(I+III)}は生後1週、生後3-4週のそれと比較して有意に高値 (p<0.05)であった。UCP {I/(I+III)}と受胎後週数)には、有意な相関を認めなかった(R2=1.8x10-4, p=0.93)。これらの結果から、UCP {I/(I+III)}は生後24時間以内で高値を示し、生後1週で低下し生後4週まででは有意な変化を示さず、この時期の抱合ビリルビン値の高値は、肝臓での抱合能の未熟性が主な要因であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
早産児の生後のビリルビン抱合能を評価するためには、肝臓における抱合能と抱合ビリルビンの排泄能の同時の評価が必要であると考えられる。これまでに、早産児では生後2週間以降は抱合ビリルビンの排泄能力は一定になることが確認され、抱合能力の評価には抱合ビリルビンと非抱合ビリルビンの評価で推測が可能と考えられる。今年度は、同じ早産児を対象に、抱合ビリルビンの抱合能の発達的評価を行い、排泄能との関連を検討する。同時に近赤光を用いた脳内酸素消費を測定する。特に、脳内Hb酸素飽和度は、脳内静脈内Hb酸素飽和度を示すと考えられるため、この臨床的裏付けを行うと同時に、この脳内Hb酸素飽和度が低下することは脳内酸素消費が進んだと考えられるため、その生後の経時的変化を測定して、ビリルビン抱合能との関連を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳酸素代謝量測定の実験装置の不具合により遅延し、修理を行ったので血清(ZZ)-ビリルビンIXα、グルクロン酸抱合ビリルビン、ビリベルジンの測定を行う。
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