研究課題/領域番号 |
16K10096
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
岡部 明仁 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10313941)
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研究分担者 |
清水 千草 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 日本学術振興会 特別研究員 (70435072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GABA / VGAT / KCC2 / 舌下神経核 / 呼吸リズム / 周産期 |
研究実績の概要 |
呼吸は胎児期に始まり、γ-アミノ酪酸(GABA)が重要な役割を果たしている。GABAをシナプス小胞に充填する小胞型GABAトランスポーター(VGAT)欠損マウス及びCl-を細胞外に排出し、GABAを抑制性に導くK+-Cl-共輸送体(KCC2)欠損マウスは、共に呼吸不全で生直後に死亡する。これらの遺伝子欠損マウスにおける胎児期呼吸リズムを比較すると、舌下神経核を構成する運動神経細胞において、呼吸を発生させるためにはGABAシナプスの入力が必須で、且つ規則正しいリズムには細胞内Cl-濃度([Cl-]i)が低値となりGABAが抑制性に働くことが重要であることが示唆された。 このことから、H28年度は、GABA入力がいつ完成するのかを知る目的で、胎生16日齢(E16)から生後0日齢(P0)までのGAD67-GFPノックインマウスを用いて、舌下神経核におけるGABA作動性神経細胞の組織学的検討を試みた。その結果、P0における舌下神経核にはGABA作動性神経細胞は認められなかった。加えてC57/BL6Jの正常動物を用いてE16から生後7日齢(P7)の舌下神経核におけるVGATの発現変化を免疫組織化学法により検討した。その結果、E16では既にVGATの発現が認められ、P0まで次第に増加する傾向を認めた。 さらに、C57/BL6Jの正常動物を用いて、胎児期から生直後にかけどのように[Cl-]iが低下していくのかを知る目的で、[Cl-]iを損なわないグラミシジン穿孔パッチクランプ法を用いた電気生理学的手法により検討した。胎生16‐18日齢の群と生直後-生後2日齢の群を比較すると出生前後で[Cl-]iが減少する傾向が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に予定していたGAD67-GFPノックインマウスの妊娠確率、胎児数が予想よりも少なく、組織学的検討の一部しか行えなかった。しかしながら、C57/BL6Jの正常マウスを用いて平成29年度に行う予定であった舌下神経核内の運動神経細胞における[Cl-]iの測定を前倒しで始めており、発達過程において出生前後で減少する傾向をとらえることができている。加えて、正常マウスを用いた舌下神経核におけるVGAT及びKCC2の発現変化の検討を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は引き続きGAD67-GFPノックインマウスの繁殖を続け、ホールセルパッチクランプ法を用いたバイオサイチンによるGFP陽性細胞の形態学的同定を試みる予定である。加えて、舌下神経核内の運動神経細胞において、発達期における[Cl-]i変化の測定のみならず、膜特性などの様々なパラメーターについて解析し、結果を強固なものにしていく予定である。さらに、正常マウスを用いた舌下神経核におけるVGAT及びKCC2の発現変化については、さらに実験数を増やしていき、定量的解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた製品(消耗品)は国内在庫がなく、かつ受注生産であったため平成28年度内の購入が困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度4月以降に発注し、研究を行う。
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