研究課題
サイトメガロウイルスの胎内感染メカニズムは明らかにされていない。ウイルスの垂直感染阻止機構のひとつとして、胎盤栄養膜(placental trophoblast)由来エクソソームに含まれるマイクロRNA(pt-miRNA)によるオートファジー誘導が報告されている。多くのウイルスはpt-miRNAにより経胎盤感染出来ないにもかかわらず、pt-miRNAはむしろCMV感染を促進させる可能性が示唆されている。CMV感染におけるpt-miRNAの役割を明らかにすることによりある種のpt-miRNAがリスクファクターと分かれば、これを標的とした積極的な予防法の開発に繋げることが出来る。胎盤由来マイクロRNAが感染に促進的効果をもたらす機序を明らかにし、胎内感染防止を目指している。初年度は胎盤に高発現する2種類のmiRNAを導入した細胞を用いたところ、CMV感染効率の上昇が認められた。しかしながら上昇率は顕著ではなかった。恒常的に発現する細胞を用い、他のmiRNAも検討する必要がある。先天性CMV感染症の発症病理に関しても多くは未解明である。先天性CMV感染は聴覚障害を引き起こす主要因のひとつである。聴覚障害の進行時期に内耳有毛細胞のミオシン発現消失が認められ、これが聴覚障害の要因と考えられている。しかしながらミオシン発現が消失する機序は不明である。ミオシンはモーター蛋白であり、音信号で反応する有毛細胞の運動において重要な役割を担っている。有毛細胞自身にCMV感染は認められず、CMVがどのようにミオシン発現消失へと関わっているのかを解明する必要がある。マウス内耳有毛細胞における糖脂質欠損では聴毛脱落、糖脂質組成変化ではミオシン局在不安定化が報告されている。CMV感染が糖脂質の分解や組成変化に関わっていることが証明できれば、CMVのみならず他の感染症による聴覚障害を解明する一助にもなる可能性が考えられる。現在、ミオシンや糖脂質と交叉する抗CMV抗体の探索を行っている。
3: やや遅れている
所属機関の変更に伴い、当初は計画よりもやや遅れていた。しかし研究環境の充実に伴い、その後の研究はおおむね順調に進展している。
当初は胎盤に高発現する上位2種類のmiRNAに限定して研究を行った。今後は胎盤に発現するmiRNA群を用いた検討も行う予定である。
Thermo Scientific NanoDrop(ND-2000)を購入予定であったが、受領金額での購入は難しかったため。
miRNA関連試薬と細胞機能解析キットを追加購入予定である。
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Fukushima J Med Sci
巻: 62 ページ: 36-42
10.5387/fms.2015-24