研究課題/領域番号 |
16K10098
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
桃井 伸緒 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10285033)
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研究分担者 |
郷 勇人 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30443857)
青柳 良倫 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (30509469)
金井 祐二 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (60448628)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胎児 / 低酸素 / 心血行動態 / 低酸素誘導因子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠初期の胎児が過度の低酸素に対して起こす反応を明らかにすることで、妊娠初期の母体・胎児管理の重要性を示すともに、妊娠初期の胎児低酸素バイオマーカーの開発に寄与することである。今年度は、胎児心筋に多く発現しているIkrチャネルの阻害薬であるフェニトインを母マウスに投与して胎仔を徐脈にし、母体に影響を与えず、胎仔が低酸素に陥る実験系の確立を目指した。本研究の目的を遂行するためには、母獣心血行動態に変化を認めず胎仔徐脈が生じ、かつ、胎仔死亡をきたさない薬剤投与量の決定が必要である。胎仔および母獣の心血行動態は、小動物用超音波高感度イメージングシステムを用いて観察した。これまでの検討では、在胎日齢11.5日の母マウスに生理食塩水を投与したコントロール群と、フェニトイン50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg 投与した4 群の比較において、投与後12 時間時点で、それぞれの群で0%、10%、18.5%、17.0%に胎仔心停止が見られ、心停止胎仔を除いた胎仔の心拍数も投与前との比較で、+20.2%、-10.9%、-32.%、-46.2%と用量依存性に低下していた。しかし、50mg/kgおよび75mg/kg投与群について、低酸素に関係する遺伝子であるHIF-1および誘導されるVegfの胎仔中の発現を比較したところ、コントロール群と有意差を認めなかった。このため、徐脈に曝露される時間を延長する目的で、薬剤投与から48時間後の胎仔血行動態を観察したところ、75mg/kg投与群では全胎仔の心停止を認めた一方、50mg/kg投与群では胎仔徐脈を認めなかった。現在、薬剤投与量を増減しながら至適な投与量と組織低酸素評価時期の決定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェニトインを母体マウスに投与することにより発生初期のマウスに起きる心血行動態を、in vivoで評価できたのは本研究が始めてである。しかし、胎仔死亡に至らず、かつ胎仔組織に低酸素が生じたことを証明できる薬剤量、投与法、投与から観察時期までの決定に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
胎仔が出生まで生存し、かつ、胎仔徐脈が観察されるフェニトイン投与量を決定する。投与量が決定できたら、HIF-1、および誘導されるVegf、erythropoietin、Glut-1、Igfbp-1、Bnip3 について、胎仔・胎盤・子宮筋における発現を観察し、胎仔組織低酸素を認める投与後期間を決定する。この実験系が確立できたならば、両群に、非妊娠マウスにフェニトインを投与した群を加え、3群の母体血液中のmiRNA 発現を調べ、フェニトイン投与妊娠マウスに特異的に発現しているmiRNA を同定し、胎児低酸素と関連するバイオマーカーとしての可能性を探る。miRNAの検討については、同手法を米国で学んできた研究分担者が現在も別な研究で継続しており、実験系が確立できれば随時開始が可能な状況にある。胎児徐脈以外のフェニトインによる作用が実験の障害になる際は、Ikr チャネル遮断作用を有する抗不整脈薬を使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、母体心血行動態に影響を与えず、徐脈から胎仔低酸素をきたす薬剤投与量と観察時期の決定を行っており、予算の多くを占めるWestern blot 法および定量RT-PCR 法に用いる薬剤、およびmicroRNA測定用の機材および薬剤購入が少ない状況にあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、マウスを用いて、母獣心血行動態に影響を与えず胎仔徐脈をきたす薬剤量の決定を行う。決定次第、HIF-1α VEGF、Igfbp-1などの組織低酸素測定に必要なELISAkit、および、microRNA測定に必要なRNA later、mirVana miRNA 抽出kit、TaqMan Low Density Array rodent,Card等を購入予定である。
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