研究課題
未熟児医療の中で動脈管開存症は生命予後を左右する因子の一つであり,その治療は重要な位置をしめる。内科的治療としてはプロスタグランジン合成阻害剤が唯一の薬剤であるが、その重篤な副作用のためにしばしば治療の中断を余儀なくされる。また、プロスタグランジン合成阻害剤への反応が不良な例への対応に苦慮する事も多い。動脈管開存症においては絨毛膜羊膜炎などの子宮内の炎症が胎児に波及し血中のサイトカイン濃度が著しく上昇した状態である、胎児炎症反応症候群の早産児にその頻度が高いことや、感染の合併例にプロスタグランジン合成阻害剤反応不良例や動脈管の再開存率が高い事が知られている。そこで本研究は、炎症と動脈管の閉鎖との関係に着目し、各種サイトカインと動脈管開存症との関連を明らかにすることでプロスタグランジン合成阻害剤以外の抗炎症薬による動脈管の治療を目指すことを目的として研究を行った。本年度は昨年度に引き続き、抗炎症薬である糖質コルチコイドの一種のベタメタゾンの動脈管への作用を検討した。ベタメタゾンがラット動脈管平滑筋細胞中のパキシリン・リン酸化パキシリンという細胞遊走蛋白の発現を亢進し、さらには形態学的にラメリポディア形成を促進することで細胞遊走を促進していることを突き止めた。そしてこれらの結果と昨年度までの成果を合わせてCirculation Journal誌に投稿し、採択された。
2: おおむね順調に進展している
これまでの先行研究から、炎症を抑制することが、動脈管開存症の治療となる可能性が示唆されているため、本年度は、炎症の動脈管平滑筋細胞への作用の検討を予定通り行った。ベタメタゾンによる動脈管平滑筋細胞遊走促進メカニズムをさらに深めて検討し、その成果を論文として発行するに至った。
本年度は動脈管の閉鎖に有効な糖質コルチコイド投与方法の検討として、ラットを用いたin vivoの実験で糖質コルチコイドの種類や投与量、投与間隔などによる変化を評価する予定である。また、引き続き新生児の血液検体の集積状況に応じて、サイトカインの濃度を測定する予定である。
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Circulation Journal
巻: 83 ページ: 654, 661
10.1253/circj.CJ-18-1033