研究課題/領域番号 |
16K10100
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三角 吉代 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (70529148)
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研究分担者 |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00305525)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低酸素虚血性白質障害 / 稀突起膠細胞 / Kir7.1 / IGF-2 / RNA干渉 / 免疫染色 |
研究実績の概要 |
周産期低酸素虚血性白質障害(PWMI)では稀突起膠細胞(OLG)が傷害され脱落する。我々はPWMIへの細胞療法の確立を最終目的とし、モデル動物の病態解析と細胞移植実験を実施している。本研究では、低酸素虚血脳内で特異的に発現増加が誘導される因子のKir7.1およびIGF-2に注目し、PWMI脳内でのOLG分化抑制メカニズムを解明し、さらに細胞移植後の脳内でのOLG成熟促進につなげることを目指している。 H28年度は、1)PWMI脳内におけるKir7.1およびIGF-2発現変化の解析、2)発現細胞の同定、3)IGF-2受容体の発現確認と発現細胞の同定、をin vitro実験および in vivo実験から解析を進めた。また、RNA干渉の機能抑制実験のための準備実験を実施した。 その結果、Kir7.1は生後7日齢のPWMI脳内のOLGと星状膠細胞(AST)に発現し、その発現増加は14日齢までに消失すること、in vitroで1%酸素条件下で蛋白発現が増加することが明らかになった。またIGF-2とその受容体は、PWMI脳の白質内でOLGとASTに発現増加するのに対し、ED1陽性ミクログリア(MG)や神経細胞には発現しないことが明らかになった。しかし、皮質内ではIGF-2はASTと神経に発現し、その受容体はOLGと神経に発現することが分かった。すなわち、白質と皮質では異なる作用メカニズムが存在することが明らかになってきた。一方、機能抑制実験のための予備実験から、現段階でKir7.1のRNA干渉は不可能であり、今後さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素虚血脳内で特異的に発現増加が誘導される因子のKir7.2およびIGF-2に注目し、周産期低酸素虚血性白質障害(PWMI)脳内でのOLG分化抑制メカニズムを解明し、さらに細胞移植後の脳内でのOLG成熟促進につなげることを目指している。 PWMI脳内におけるKir7.1およびIGF-2発現変化の解析、発現細胞の同定、IGF-2受容体の発現確認と発現細胞の同定、をin vitro実験および in vivo実験から解析を進めた。また、RNA干渉の機能抑制実験のための準備実験を実施した。 機能抑制実験のためのKir7.1のRNA干渉の予備実験により、現段階ではその発現抑制は不可能で今後の検討がさらに必要であるが、その他の実験に関しては概ね順調に進んでいるである。
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今後の研究の推進方策 |
Kir7.1のRNA干渉の実験は今後さらに検討し、機能抑制実験を可能としていく。稀突起膠細胞前駆細胞(OPC)の増殖段階でのKir7.1の関与を考えており、OPCの細胞分裂におけるKir7.1の機能解析を検討する。 一方、IGF-2はOPCからOLGへの分化段階において作用していることが考えられるため、in vitroにおける分化誘導の証明をまず進めていく。その後、in vivoにおける分化誘導能を証明していく。最終的には、移植OLGに対する分化促進能を証明することによってPWMIへの細胞療法の確立につなげていく。 白質内と皮質内における作用の相違が明らかになってきたため、in vivoにおけるAST、OLG、MG、神経細胞との相互作用を念頭に入れ、in vitro系を用いてIGF-2の作用解析を探求していく。
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