我々は周産期低酸素虚血性白質障害(PWMI)への細胞療法の確立を目的とし、モデル動物での病態解析と細胞移植実験に取り組んでいる。本研究では、PWMI に特異的に増加するインスリン様成長因子(IGF)-2 に注目し、その生理作用の解明から細胞移植後の脳内でのOLG 成熟の促進へと繋げていくことを目指している。これまでに、脳内に発現増加するIGF-2のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)に対する作用機序を、IGF-1の作用機構と対比しながら解析してきた。またin vivo実験から、移植されたOPC細胞は正常脳内に比べPWMI脳内において有意に分化抑制されていることを明らかにしてきた。 2019年度の実績としては、これら結果をまとめCell Transplantation誌に投稿したことである。revise中であるが、査読者のコメントに対する実験をおこなった。具体的には、移植時期をモデル作成2日後のP5で実施することに加え、P19で移植することを実施し、移植時期の違いによるホスト脳内での炎症状況の違いによる移植細胞の生着について検討した。その結果、p19に移植し2週後の細胞生着の状態を比較検討したところ、PWMI脳内では異なる移植時期においても移植細胞の分化が抑制されていることが示された。すなわち、分化抑制における炎症状態の違いはあまり関与していないことが示された。査読者に対するコメントを適切に実施するような実験を実施し、より科学的に質の良い論文が作製できている。
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