研究課題/領域番号 |
16K10103
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西久保 敏也 奈良県立医科大学, 医学部, 病院教授 (20208169)
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研究分担者 |
西本 瑛里 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00645591)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 極低出生体重 / 脳室内出血 / von Willebrand因子 / 血液凝固第Ⅷ因子 |
研究実績の概要 |
児の脳内血管の疑似血管として、臍帯静脈血管内皮細胞を用いて血管由来のVWFの構造と機能評価の検討を行った。 臍帯の断面を利用した組織学的検討では、臍帯血管内皮細胞のVWFと、VWFに結合している血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)は、特異抗体を用いて蛍光免疫染色法でそれぞれ同定が可能であった。この組織学的結果は、極低出生体重児における臍帯静脈血管を用いても同様に、VWFとFⅧの同定が可能であった。 続いて、この血管内皮細胞に認められたVWFのFⅧ結合能を評価するために、一旦、VWFに結合しているFⅧをカルシウム塩で分離し、純化VWFを新たに添加する事により成熟児の血管内皮細胞内のVWFと極低出生体重児のVWFとの比較検討を試みた。しかしながら、in vitroでは、容易にVWFから分離するFⅧが、臍帯血管内皮細胞を用いた組織学的実験系では、モル濃度を高くしても分離できなかった。 そこで、塩化カルシウム未添加の極低出生体重児の臍帯血管内皮細胞と成熟児血管内皮細胞を用いて、VWFの発現量とFⅧ結合量を共焦点レーザー顕微鏡を用いて、蛍光濃度から定量比較する検討を行った。その結果、蛍光強度は、成熟児の臍帯静脈血管内皮細胞と極低出生体重児の血管内皮細胞間で有意差を認めなかった。 そのため、臍帯静脈から血管内皮細胞をdispaseを用いて分離し、その分離した内皮細胞を用いて、VWFとFⅧについて検討する事とした。分離した細胞にDDAVPを添加した所、VWFの放出を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
分離した血管内皮細胞にDDAVPを添加し、放出されるVWFの定量とマルチマー解析、および還元バンドの解析を行い、還元バンドで270kDaのサブユニットの存在を確認した。 さらにDDAVPの濃度や反応時間によるVWFの放出を検討した所、反応後1時間で最も高い濃度を示した。また。この反応は、V2レセプター阻害剤で、容量依存性に阻害されたことから、DDAVPによるV2レセプターを介した細胞内VWFの放出であることが確認された。 しかし、臍帯静脈から血管内皮細胞を分離するのに用いるdispaseは、組織障害性は低いものの、低濃度でも純化VWFを消化・切断することが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
dispaseにVWF切断機能があることから、低濃度のdispaseを用いて血管内皮細胞を剥離検討する方法に加えて、臍帯静脈血管内にDDAVP溶液を注入し、血管内皮から放出されたVWFを検索する方法も検討する必要がある。また、臍帯静脈血管内のVWF遺伝子のreal-time PCRによるmRNAの定量による、極低出生体重児の特性の評価も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行う予定であった研究に修正を必要としたため、その修正研究の基礎研究に要した費用が、本研究ほどには費用がかからなかったため。 今年度は修正研究を多数症例を対象に行うため、予定通りの費用を必要とする。
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