研究実績の概要 |
本年度は、①肺胞微小循環障害に対するAng1投与の形態学的効果検討、②Ang1, Ang2, Tie2, Tie1, VEGF-A, Flt1, Flk1遺伝子の正常発達および高濃度酸素投与における経時的 (d0, 7, 10, 14, 21) 発現量の検討、③Ang1投与による同遺伝子発現量変化の検討を目標とした。 ①形態学的評価: Ang1投与回復群の肺胞は、回復群と比較して肺胞構造の改善を認め、超微形態観察では血液空気関門の肥厚の改善と血管内皮細胞形態異常の改善を認めた。②経時的遺伝子発現評価: d0を基準として正常発達群におけるAng1発現量比(正常vs暴露群)は、0.78 vs 0.74(d7), 1.22 vs 1.00(d10), 2.13 vs 1.39(d14)、Tie2は、0.98 vs 0.54(d7), 1.18 vs 0.48(d10), 1.39 vs 0.54(d14)と、正常群で経時的上昇があったのに対し暴露群ではなかった。一方Ang2発現量比は、1.57 vs 5.00(d7), 3.00 vs 3.43(d10), 2.43 vs 4.43(d14)と高濃度酸素投与群では正常群を超える上昇を認めた。③Ang1投与による同遺伝子発現に対する効果: 正常発達群, 回復群, Ang1投与回復群での発現比は、Ang1(順に3.13, 2.96, 3.25), Ang2(2.07, 2.90, 2.80), Tie2(2.25, 1.89, 1.78), Tie1(3.13, 2.96, 3.25)と差はなかったが、関連遺伝子ではVEGF-A(1.56, 1.01, 1.16), Flt1(1.65, 1.07, 1.23), Flk1(0.99, 0.65, 0.74)と回復群と比較してAng1投与群で発現量の上昇がみられた。 以上よりAng1投与による肺胞微小血管系障害の形態学的改善の背景には、回復過程における関連遺伝子の発現修飾が関与している可能性がある。
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