研究実績の概要 |
本研究目標は、Angiopoietin-1(Ang-1)による慢性肺疾患(CLD)における肺胞微小血管障害への改善効果を解析することである。本年度は、正常発達群(日齢21), 回復群(日齢21、高濃度酸素暴露後7日間ルームエア), Ang1投与回復群(日齢21、高濃度酸素暴露後Ang-1投与)の3群間において、1)肺胞微小血管の超微形態解析、2)肺体積および右室心筋重量/心室中隔+左室心筋重量(RV/IVS+LV)評価、3)Ang-1投与により惹起される免疫関連遺伝子発現の網羅的解析を行った。 超微形態解析:正常発達群と比較して回復群では、著明な血液空気関門(BAB)の肥厚を認め、中でも血管内皮細胞の肥厚が顕著であったが、Ang-1投与群では正常発達群レベルに改善していた。 肺体積およびRV/IVS+LV評価: 体重あたりの肺体積は、正常発達群と比較して回復群で増大しており、肉眼的にも気腫様変化を呈していたが、Ang-1投与群では、その増大は改善していた。RV/IVS+LV評価では、正常発達群と比較して回復群では増加し、肺高血圧を示唆する所見であったが、Ang-1投与群では、正常発達レベルと変わりはなかった。 免疫関連遺伝子発現の網羅的解析: 高濃度酸素投与により惹起され、Ang-1投与によりその発現が抑制された遺伝子群について解析を行ったところ、Sh2b2、Steap1、Grin2c、Gata4、Cxcl13、Tff2、Tnf、Bpifa1、Cxcl9、Oas2、Ccl2、Muc5ac、Ptger3、Ctsg、Ccl21a、Igkv8-30などの、免疫系や体内恒常性にかかわる遺伝子が抽出された。 以上より、Ang-1がCLDに続発する肺高血圧発症予防の治療戦略になる可能性が示唆された。またその作用効果の背景には、免疫関連遺伝子の制御が示唆された。
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