研究課題/領域番号 |
16K10113
|
研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
奈良 篤樹 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (60387959)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | オルガネラ接触 / MLN64 / エンドソーム / 胎盤細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト胎盤細胞のミトコンドリアで大量に産生されるプロゲステロンは、妊娠維持に働く極めて重要なステロイドホルモンである。プロゲステロンを大量に産生するには、その原料となるコレステロールを大規模かつ効率よくミトコンドリアへ輸送する必要があるものの、その輸送分子機構についてほとんど分かっていない。研究代表者は、胎盤細胞においてエンドソームとミトコンドリアが接触することを発見した。このエンドソームに存在するコレステロール結合タンパク質MLN64を欠くとプロゲステロンを産生できないことから、本研究では、胎盤細胞におけるエンドソーム-ミトコンドリア間の接触による新規コレステロール輸送の分子機構解明を目指す。本年度では,強制的にエンドソームとミトコンドリアを接触させる新規誘導コンストラクト系を構築した。 昨年度作製したコンストラクト発現細胞を蛍光顕微鏡や電子顕微鏡を用いて詳しく解析したところ,正しくミトコンドリアへ局在化していない可能性が認められた。そこで今年度は,改めてミトコンドリア外膜タンパク質Tomm70Aのミトコンドリア移行シグナルに換えた新規コンストラクトを構築した。このコンストラクトを胎盤由来培養細胞に発現させると,エンドソームとミトコンドリアは極めて近傍に接することが電子顕微鏡解析で判明した。しかし一方で,エンドソーム内腔にミトコンドリアやコンストラクト発現タンパク質が取り込まれている像も観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度構築したコンストラクト発現実験では,エンドソーム内腔にミトコンドリアが取り込まれる予想外の結果が得られた。当初,エンドソームとミトコンドリアとの接触する部位が単に増えることを予想し,もちろん,予想通りの画像も得ることができた。この予想外の結果は,オルガネラ間接触が極めて厳密に制御されていることを示唆するものであり,新たな知見をもたらした。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)エンドソームとミトコンドリアとの間の接触部分を3D電子線トモグラフィーを用いて立体観察することで,オルガネラ接触面の面積や距離,面の間の構造を明らかにする。MLN64ノックダウン細胞におけるエンドソームとミトコンドリアとの間の接触部分についても同様の方法で立体観察する。 (2)エンドソームとミトコンドリアとの間の接触を制御する因子を検索する目的で,MLN64と相互作用分子を同定する。 (3)ステロイドホルモンを質量分析計で定量する実験系の構築を行う。
|