研究実績の概要 |
平成31年度も、引き続き胎児期の心機能評価をDoppler法によるTei index, 組織Doppler法による収縮能、拡張能、およびTei index、Mモード法によるTAPSE, MAPSE、Dual gate Doppler法によるTei index, 心房内伝導遅延の計測の各項目についてデータを収集した。正常コントロール児を100例以上に対して各計測値を収集できた。抗SS-A抗体陽性母体では、胎児10例の症例について各計測値を収集できた。各々のデータを個別に見ると、抗SS-A抗体陽性母体の胎児でも概ね心機能は正常範囲で推移していた。昨年度までに解析し、異常値を持つ症例が散見されるとしていたTei indexの異常値については、Dual Doppler法による同一心拍でより正確な計測では、異常値は認めなかった。しかし、このDual Doppler法での詳細な当容収縮期(ICT)や当容拡張期(IRT)を計測すると、抗SS-A抗体陽性母体の胎児に異常値を持つ症例を認めた。一方、抗SS-A 抗体陽性母体からは、研究中に最終的に房室ブロックの発症症例はなかった。したがって、心機能の異常と房室ブロックの発症や早期発見との関連については検討できなかった。 これらの結果について、国内、国際学会においては、本研究のテーマである心機能低下の可能性を含めて、新しい母体管理方法について新しいデバイスの利用の考案について紹介した。特に今年度では、母体ステロイド投与による胎児治療について、心機能の変化と合わせてその適応について考察し、報告した。また、平成28年度のパイロット研究(過去5年間の抗SS-A抗体陽性母体の胎児について心機能評価を後方視的の検討)の結果であるTei indexの上昇という結果を踏まえて、関連する専門家と情報交換を行った。現在、本研究の結果について、論文を作成中である。
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