【背景】新生児集中治療室(NICU)では腸内細菌叢の確立促進及び感染症や壊死性腸炎の発症予防を期待して未熟な消化管機能の極低出生体重児に対してプロバイオティクスの投与が行われている。しかし、実際に投与されたプロバイオティクス中の生菌が定着しているかについての検討は少なく、前年に引き続き症例の蓄積を行った。 【方法】当院NICUで出生後より入院加療を開始し、生後24時間以内にプロバイティクスとしてBifidobacterium breve(B. breve)を投与した極低出生体重児:21例(帝王切開14例、経腟分娩7例)、出生体重:中央値981g(545~1274g)、在胎期間:中央値28.6週(24~36週)を対象とした。経腸栄養確立日(F期)とプロバイオティクス投与終了後の修正37週以降(T期)の2回における便を採取して16s RNA解析による腸内細菌叢及び便中の短鎖脂肪酸について比較検討を行った。 【結果】F期はT期に比較して腸内細菌叢の多様性に乏しく、在胎期間と多様性(シンプソン係数)には正相関を認めた。腸内細菌叢の多様性が増加するに従いB. breveが占める割合はF期36.7%(0~95.7%)からT期11.8%(0~81.9%)と低下したが、B. breve定着率にはばらつきが大きかった。B. breveの腸内細菌叢に占める割合と分娩様式・抗菌薬投与・栄養法との関連性はなかった。便中短鎖脂肪酸である酢酸はF期(22.3μmol/g) からT期 (29.7 μmol/g) にかけて増加する傾向があった。 【考察】在胎期間が進むに従い腸内細菌叢の多様性は大きくなり、投与された生菌が腸内細菌叢に占める割合も変化する。プロバイオティクスによる効果を評価するためには腸内細菌叢の変化を認識することが重要であり、今後の研究により腸内細菌叢の変化を規定する因子の解明が期待される。
|