研究課題
臍帯血は新生児にとって最も安全かつ臨床応用しやすい幹細胞源である。これまで我々は、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットにおいて、臍帯血幹細胞移植が周生期脳損傷を軽減させることを明らかにしてきた。本研究では、ラット同種移植系を用いて、臍帯血幹細胞移植による周生期脳損傷の軽減/損傷修復効果の機序を明らかにし、新規周生期脳損傷治療法として医学的分子基盤を確立することを目的としている。GFPトランスジェニックラット胎仔臍帯血より有核細胞層を分離し、幹細胞を培養増殖(Stem cell enriched umbilical cord blood cells; SCE-UCBC)させ、HIEモデルラットに受傷3日後に腹腔内投与した。移植したラットにおいて投与9日後に凍結切片を作製したところ、GFP陽性幹細胞は脳内ではほとんど観察されず、脾臓周囲組織に数多く生着していた。二重染色を行ったところ、脾臓周囲組織において血管内皮細胞およびリンパ管内皮細胞のごく近傍にGFP陽性細胞が観察された。一方これまでの成果から、脳内で観察されたGFP陽性細胞はその多くがIba1陽性であったが、脾臓周囲組織において観察されたGFP陽性細胞のほとんどがIba1陰性であった。以上のことから、腹腔内投与した臍帯血幹細胞は脳以外の組織で生着した後、徐々に脳内に侵入しIba1陽性ミクログリア/マクロファージとなり、梗塞軽減効果をもたらしている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
今年度より病院勤務となり臨床業務が増えたため、研究時間を十分にとることができなかった。また、共焦点顕微鏡などの機器が一時故障し、研究の進捗が遅れた。
アルバイト等を雇用し、研究の推進を図る予定である。
理由:機器などの故障により実験の進捗が遅れており、実験用器具や抗体、培地などの試薬の購入を次年度に延期したため。使用計画:実験のための抗体や培地・増殖因子など試薬の購入に使用する予定である。また、研究の進捗を図るため、アルバイトの雇用費用に使用する予定である。
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Dev Neurosci
巻: 39 ページ: 273-286
10.1159/000455836