研究課題
新生児にとって最も安全かつ臨床応用しやすい幹細胞源である臍帯血を用いて、周生期脳障害治療に応用するための研究を進めている。これまで我々は、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットにおいて臍帯血幹細胞移植が周生期脳損傷を軽減させることを明らかにしてきた。本研究では、ラット同種移植系を用いて臍帯血幹細胞移植による周生期脳損傷の軽減効果の機序を明らかにし、新規周生期脳損傷治療法として医学的分子基盤を確立することを目的としている。ラット胎仔臍帯血より有核細胞層を分離し、幹細胞を培養増殖(Stem cell enriched umbilical cord blood cells; SCE-UCBC)させ、HIEモデルラットに受傷3日後に腹腔内投与した。移植したラットにおいて投与9日後に脳凍結切片を作製し免疫組織染色を行なった。近年、マクロファージのみならず脳内のミクログリアも、炎症誘発性ミクログリアと抗炎症性ミクログリアの2つのタイプに分けられることが報告されている。抗炎症性ミクログリアマーカーであるマンノース受容体抗体染色を行なったところ、SCE-UCBC投与したHIEラット脳の障害側では、マンノース受容体抗体陽性の抗炎症性ミクログリアの割合が33.1+/-12.1%であり、対照(8.4+/-1.1%)と比較して有意に高くなっていた。以上のことから、臍帯血幹細胞は内在性の炎症反応を抑制することにより、梗塞軽減効果をもたらしている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
愛知県心身障害者コロニー中央病院および発達障害研究所は2018年度に改築され、2019年3月に愛知県医療療育総合センターと名称変更した。これに伴い、病院および研究所の引っ越しおよび旧棟備品類の廃棄やその片付け等で、2-3ヶ月間実験することができなかったため、研究の進捗は遅れている。また、移転に伴い、低酸素実験に使用していたマルチガスインキュベータが故障したため、実験できない状況が続いている。
移転等の理由から今年度中に本研究課題が終了しないことが見込まれ、研究期間延長を申請した。また、故障したマルチガスインキュベータは10年以上使用していたもので、その修理には高額な費用がかかるため、新規にマルチガスインキュベータを購入し、実験を進めていく予定である。
年度末に研究所の移転があり、その際に低酸素実験に使用しているマルチガスインキュベータが故障し、修理あるいは新規購入を検討する必要が出たため。これまで使用していたマルチガスインキュベータは10年以上経過しており、修理費用も高額であったため、次年度は、新たにマルチガスインキュベータを購入する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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10.1093/cercor/bhy253
Front. Neurol
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