研究課題
我々はこれまで、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットにラット臍帯血幹細胞を移植するというラット同種移植系を用いて、臍帯血幹細胞が周生期脳障害を軽減させることを明らかにしてきた。本研究では、この臍帯血の脳障害軽減機序を明らかにし、新規周生期脳障害治療法として臍帯血幹細胞の医学的分子基盤を確立することを目指している。GFPトランスジェニックラット胎仔臍帯血より有核細胞層を分離し、幹細胞を培養増殖(Stem cell enriched umbilical cord blood cells; SCE-UCBC)させ、HIEモデルラットに受傷3日後に腹腔内投与した。投与した幹細胞は脾臓周囲の結合組織で数多く観察されたが、脳内に侵入した幹細胞は投与した細胞数の0.01%以下とごく僅かであった。投与した幹細胞の一部は、脳内ではIba1(+)細胞に、末梢ではLYVE1(+)細胞に分化していた。臍帯血幹細胞は血管やリンパ管を介して全身を移動し、脳障害軽減効果をもたらしている可能性が示唆された。今後は、移植した幹細胞が体内でどのような細胞に分化しているのかを追跡することにより、脳障害軽減機序を明らかにできる可能性がある。一方、神経特異的に発現するセリンスレオニンキナーゼであるSAD-Aのノックアウトマウスは大脳皮質神経細胞の移動が遅れ、生後早期に死んでしまうことがわかった。SAD-Aが周生期脳障害の遺伝的素因の一つとなっている可能性が示唆された。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Cerebral Cortex
巻: 29 (9) ページ: 3738-3751
10.1093/cercor/bhy253