研究課題/領域番号 |
16K10121
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岸部 麻里 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90431410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニコチン / アセチルコリン受容体 / 自然免疫 / 細胞間接着分子 / 表皮ケラチノサイト / 汗腺 / 掌蹠膿疱症 |
研究実績の概要 |
正常ヒト表皮角化細胞(NHEKs)および汗管細胞(NCL-SG3)におけるニコチン刺激後のnAChRの発現検討を行った。NHEKsを低カルシウムと高カルシウム条件で培養し、0-500nMのニコチンを添加した。24時間後に培養細胞を回収し、α3nAChRおよびα7nAChRの発現に変化がみられるかRT-PCRにて解析を行った。24時間後、受容体の発現量は変化しなかった。さらにニコチン長時間刺激で変化が生じるか検討を行った。高カルシウム培養液でNHEKsの分化を誘導する同時に、ニコチン刺激を開始し、24、48、72、96時間後に培養細胞を回収した。ニコチン暴露96時間までα7nAChRの発現量に変化しなかった。また、NCL-SG3を同様にニコチンで96時間まで刺激したが、α7nAChRの発現に変化はなかった。 掌蹠膿疱症の病態形成には、表皮内汗管の閉塞、抗菌ペプチド(dermcidin、cathelicidin)の産生増加などが膿疱形成に関わるとされている。NHEKsとNCL-SG3をニコチン250nMで96時間刺激し、細胞間接着分子、表皮分化マーカー、抗菌ペプチドの発現が変化するか、RT-PCR法および細胞染色により解析した。ニコチン暴露96時間後、NHEKsにおけるタイトジャンクション構成分子(Occuludin, Claudin-23, ZO-1)、コルネオデスモシン構成分子(desmoglein 1, Corneodesmosin)、抗菌ペプチド(Cathelicidin、β-defensin-2)の発現が有意に低下した。一方、NCL-SG3では、変化がみられないことがわかった。以上から、ニコチン暴露は表皮角化細胞におけるホメオスターシスを変化させるが、汗腺細胞には影響しないと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、培養細胞を用いた研究を計画していた。現在まで、おおむね計画通りに進行している。当初の計画では、ニコチン刺激24時間後の培養細胞の変化を解析する予定であったが、細胞の状態に影響を与えないことがわかった。実臨床では、喫煙者は長期間ニコチンの暴露を受けていることを踏まえて、培養細胞に長時間ニコチンを作用させるよう実験条件を修正した。
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今後の研究の推進方策 |
TNF-α誘導性炎症反応が、ニコチン刺激によって増強するか検討を行う。NHEKsを高カルシウムで培養し分化を誘導すると同時に、0-250nMのニコチンで刺激し、72時間後にTNF-αを添加しさらに24時間培養を行う。コントロールは、ニコチン前処置のないTNF-α刺激のみを使用する。培養細胞を回収し、サイトカイン(TNF-α、INF-γ、IL-6、IL-8、IL-17、IL-22等)、抗菌ペプチド(Cathelicidin, Dermcisin、β-defencin等 )の発現を定量的PCRおよびウエスタンブロット法、免疫染色により解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などを効率的に購入するように努め、当初計画より経費の使用が節約できたことにより生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究に必要な物品、試薬の購入に充てる予定である。
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