研究課題/領域番号 |
16K10123
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
鈴木 民夫 山形大学, 医学部, 教授 (30206502)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 尋常性白斑 / 化学物質 / 感受性遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究は、化学物質誘発性尋常性白斑(chemicals triggering occupational vitiligo; 以下co-Vit)に共通する遺伝的背景を明らかにすることを最終目的とし、そのためにまずはロドデノール誘発性脱色素斑(以下、RD白斑)発症に関与する感受性遺伝子(以下、RD感受性遺伝子)を明らかにすることを目的としている。 我々は本研究遂行のためにRD白斑患者、およびボランテイアからDNA抽出するための唾液試料収集を行ない、解析可能であった430サンプルのそれぞれの遺伝子型解析を高密度SNP チップ(HumanOmni2.5-8 v1.1)を用いて行った。それらの遺伝子型と臨床症状の関連性(GWAS)について、統計解析した。まず、221人の白斑患者と120人のRD白斑発症しなかった群、あるいは89人の健常人群をそれぞれLogistic regression analysisを行ったところ、コントロール群の違いによりp値のピークの位置がかなり異なり、また、10-8以下のピークは認められなかった。そこで、年齢とRD使用量(本数)のデータがある 259人(Case 147人、RD-Control 112人)を使用して、再度、259人について主成分分析を行い、4つの主成分、年齢、使用量を調整したロジスティック回帰モデルにより、GWASを行った。その結果、有意水準のベンチマークであるgenome-wide significance(一般的に5x10-8以下)を超えたSNPは認められなかったが、10-6をsuggestiveとして採用したところ、少なくとも3つの遺伝子(匿名にて記載:A, B, C)が該当した。現在,培養細胞を用いてこれらの3つの遺伝子の発現を低下させて、RDに対する感受性の変化を観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、感受性遺伝子候補として3種の遺伝子が明らかになり、培養細胞(メラノサイトとケラチノサイト)を用いてその発現を調べており、いずれも発現が認められた。また同時に、培地にRDを添付した時の候補遺伝子の発現の変動を経時的に観察したところ、候補遺伝子は、RD負荷時にも発現が大きく変動することはなかった。そこで、各RD感受性遺伝子候補に特異的なsiRNAを作製し、培養メラノサイトに添加して各感受性遺伝子候補を特異的に発現抑制することにより、RD感受性の変化を明らかにする実験についてもいくつかの予備実験は終了しているが、感受性が明らかに変わる遺伝子は未だ見いだせていない。計画では、感受性が異なる遺伝子を見出すことまでを初年度の進捗としていたが、現在、まだそこには至っていない。その他の点については、おおよそ計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、各感受性遺伝子候補の発現量を減少させることにより、RDに関する感受性が変化するかどうかを確かめる。実験系の条件を変えることにより、RD感受性が異なるかについて、詳細に検討する。その後については、計画通りにこれまでにco-Vitの原因として報告されているフェノール類の添加実験を行ない、同定した遺伝子がRD感受性遺伝子であるのみならずco-Vitの感受性遺伝子であるかどうかを検証する。また、この3種の遺伝子についてヒト皮膚組織での発現を免疫組織学的に検証する。 一方で、RDによって発現量変化を起こす遺伝子をマイクロ・アレイで網羅的に探索し、そこで検出された遺伝子とGWASの結果とを突き合せ、共通に検出される遺伝子を検証する。
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