研究実績の概要 |
本研究は、ロドデノール誘発性脱色素斑(以下、RD白斑)発症に関与する感受性遺伝子(以下、RD感受性遺伝子)を明らかにすることを目的としている。2016年度までに我々は、259人(RD白斑患者147人、RD-Control 112人)について主成分分析を行い、4つの主成分、年齢、使用量を調整したロジスティック回帰モデルにより、GWASを行った。その結果、有意水準のベンチマークであるgenome-wide significance(一般的に5x10-8以下)を超えたSNPは認められなかったが、10-6をsuggestiveとして採用したところ少なくとも3つの遺伝子(匿名にて記載:A, B, C)が該当した。 2017年度はこれら3つの遺伝子について以下の方法で解析した。 ①各種データベースを使用して、各遺伝子の既知の機能や組織発現を検討したところ、いずれもメラノサイトにおいて遺伝子発現されており、白斑発症に何らかの関りが予想された。 ②3種類の候補遺伝子に特異的なsiRNAを作製し、培養メラノサイトに添加して各遺伝子を特異的に発現抑制して、RD感受性の変化を確認したところ、3種のうち2種類の遺伝子(A、C)に関してはRD感受性の変化を確認した。 ③培養メラノサイトの培地にRDを添付した時の候補遺伝子の発現の変動を経時的に観察したところ、いずれの遺伝子も遺伝子発現誘導はかからなかった。 ④RD感受性が異なる培養メラノサイト13種(Kasamatsu S, et al. J Dermatol Sci 76:16-24, 2014)におけるRD負荷時の発現を解析したが、3種類の遺伝子には大きな変動は認められなかった。 以上の結果より、3種の遺伝子(A, B, C)は、RD感受性決定にかかわっているものの、contributionはさほど大きくないことが予想された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにした3種類のRD感受性遺伝子(A, B, C)のRD白斑発症における機能解析を行い、RD白斑発症の病態メカニズムを解明する。我々がこれまでに確立した日本人皮膚モデルマウスにRD白斑を発症させたRD白斑モデルマウスを使用して、ぞれぞれの遺伝子産物の発現やその増減を明らかにする。また、メラノサイトにもならず、ケラチノサイトでの発現についても同様に解析する。 ノックアウトマウスについては、各感受性遺伝子のそれぞれのcontributionはさほど大きくないことが予想されるため、作成することは中止する。そして、RD白斑モデルマウスを使用して解析することとする。
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